2014 Fiscal Year Annual Research Report
アングロ・サクソン期英国における福音書のテクストとコンテクスト-古英語訳を中心に
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13J02414
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小竹 直 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 西洋中世史 / 古英語 / 西洋中世写本 / キリスト教 / ラテン語聖書 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、受入研究機関である慶應義塾大学での研究を中心とし、その成果を以下に詳述する国際学会で発表をすることに重点を置いた。また、二度に渡る海外渡航では、資料収集とともに多くのセミナーやシンポジウムに参加することで国際的な学術交流を深めた。 2014年7月にベルギーにて行なわれた国際学会(18th International Conference on English Historical Linguistics)では、『ラシュワース福音書』の言語的特徴に焦点をあてた発表を行ない、その成果は別途論文集にて出版を予定している。同年8月に英国にて開催されたLanguage, Culture and Society in Russian/English Studies: 5th International Conferenceでは、古英語時代の福音書の伝統と関連の強いオクスフォード大学ボードリアン図書館所蔵の写本断片に関する口頭発表を行なった。また9月に同地にて行われたIES-Keio Joint International Conference: Old and Middle English Studies: Texts and Sourcesにおいては、ロンドン大学所蔵の写本に残る中英語で記された聖母マリアの被昇天にまつわる作品に焦点をあてた発表を行なった。 上記IES-Keio国際学会には、企画立案から当日の進行まで運営委員として学会運営に携わった。同学会は日英の両機関を中心に国際的な学術交流を図ることを目的とし60名を超える参加者があり、3日間に渡って充実した内容の学会になったと考えられる。 2015年2~3月の渡英では、Rushworth写本の統語分析のほか、現地の写本調査を集中的に行なった。また関連領域に関して多くのセミナーに積極的に参加し学術交流を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ラシュワース福音書の校定本作成についてはおおむね予定通り進展している。特にIntroductionを構成することになる古英語訳の言語的分析やラテン語テクストに関する異読リストの作成など比較的作業時間を要するものについて作業を進めている。 さらに、より広い視点から同時代の写本や言語を多角的に検討していくことで、当初予定した以上の広がりを持った研究を行うことができ、その成果を複数の国際学会で発表できたという点で計画以上の進展があると考える。 また主たる研究対象に関する国際的学術交流を足掛かりに中世英語全域に渡る内容を網羅する国際学会を企画し運営するに至ったことも予定以上の大きな成果と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きラシュワース福音書の校定本作成を中心に研究を進めて行くとともに、研究課題を複合的な視点から検討していく。校定本については、上述した通りIntroductionやCommentaryといったテクスト本文以外の内容にさらなる充実を図るよう研究を進めて行く。 その目的達成のため対象となる写本や福音書といった枠組みにとらわれず、より広い視点でアングロ・サクソン時代の写本文化・宗教史的背景を検討していく。具体的には、数多くの古英語行間訳が残る詩編に関して写本調査に基づいた言語・テクスト研究などを取り入れ、福音書古英語行間訳との比較を導入することで、研究対象のさらなる理解につなげて行く。
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Research Products
(3 results)