2014 Fiscal Year Annual Research Report
ローマのラファエッロ芸術における初期キリスト教美術の受容
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13J02421
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深田 麻里亜 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 美術史 / ローマ美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、前年度に引き続きローマのラファエッロ芸術と伝統的図像との関連を中心に調査・研究を行った。とりわけ、ヴァティカン宮殿「コンスタンティヌスの間」壁画(1520~24年)に関する研究を実施し、11月には早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究会にて発表を行った。「コンスタンティヌスの間」は、壁面に古代末期の皇帝コンスタンティヌス1世の説話場面が描かれていることからその名で呼ばれ、壁画は部分的にラファエッロの構想に基づきながら、工房の芸術家たちによって装飾された。壁面の各説話場面の両側に描かれた、初期教会の設立に貢献した歴代教皇像に関して、筆者は各像の頭上に掛けられた天蓋モティーフに着目した。先行研究ではこの天蓋は祭礼行列用の天蓋と言及され、意味解釈の上では、教会の霊的・世俗的権威の象徴として表現されていると説明がなされてきた。筆者は、これまで必ずしも強調されてこなかった点として、この天蓋は行列用天蓋というよりは傘の形状に近く、13世紀後半の教皇像に表された天蓋のイメージを継承している可能性について検討した。加えて、各壁面に展開する絵画主題を考慮に含めた、教皇庁と世俗権との対立・盟約関係、教皇の地上における権力の象徴としての意味合いについて考察した。 また10月には、ヴィッラ・イ・タッティ(ハーバード大学ルネサンス文化研究所、在フィレンツェ)が主催する国際シンンポジウム「Space in Renaissance Italy」にて口頭発表を実施した。ラファエッロ設計に基づくヴィッラ・マダマの「庭園のロッジャ」内部空間において、建築のパトロンであるメディチ家の二人の君主、教皇レオ10世と枢機卿ジュリオ・デ・メディチの掲げる理想と美徳の称揚の図像がどのように展開しているかを提示した。こうした研究発表を通じ、欧米・中国・日本の研究者たちと意見を交換することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、ラファエッロの構想に基づき弟子たちが制作した作品について、ローマの中世美術との具体的な比較を筆者独自の観点に基づき実施することができた。そのため、研究計画はおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ローマの伝統的な図像との比較・考察を行うにあたっては、当初の研究計画において掲げた初期キリスト教時代という年代にとどまらず、より広範な年代の作例を対象に含めることが重要であることが、2014年度の研究実施状況から確認された。そのため、今後の研究においても16世紀当時の芸術家およびその周辺が、当時参照可能であった過去のキリスト教美術をどのように受容していたか、広範な視野をもって調査にあたりたい。
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Research Products
(3 results)