2013 Fiscal Year Annual Research Report
偏光依存型3次元角度分解光電子分光を用いた鉄系高温超伝導体の電子状態の研究
Project/Area Number |
13J02477
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
羽尻 哲也 名古屋大学, 大学院工学研究科, 学振特別研究員DC2
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Keywords | 鉄系高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 / 偏光依存 |
Research Abstract |
本研究では、偏光依存型3次元角度分解光電子分光を用いた鉄3d軌道と超伝導ギャップ(ノード)の同時観測を実現し、磁気的な相互作用と軌道、超伝導の関係を全運動量空間において明らかにすることにより、鉄系高温超伝導体の超伝導発現機構に迫ることを目的としている。超伝導ギャップを詳細に観測するためには、測定のハイスループット化および低温のゴニオメーターが必要であり、本研究ではそれらを可能とするシステム・装置の開発も目指している。 本研究ではまず、測定のハイスループット化を目指してレーザーを用いた高速位置決定システムの構築を行った。その結果、試料の大きさや表面の均一性にある程度の制約はあるが、以前は2時間程度かかっていたアナライザに対する試料の角度決定を±0.5度の精度で10分程度にまで短縮することに成功した。 次に新型クライオスタット用低温マニピュレータの試作機の制作を行った。目標到達温度は4Kであったが、試作機の到達温度は15K程度であった。超伝導ギャップを詳細に観測するためには試作機の到達温度では不十分であるため、さらなる低温化を目指すために改良点を模索している所である。 また従来のゴニオメーターを用いて、鉄系高温超伝導体122系Ba(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2において3次元超伝導ギャップ構造、111系LiFeAsの超伝導転移温度以上でのバンドの温度依存性などの測定を行い、122系Ba(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2においては超伝導発現にスピン揺らぎだけではなく、軌道揺らぎが重要である事を、111系LiFeAsにおいては軌道揺らぎの効果は観測されず、またこれまでには報告のない3次元的に異方性のある軌道依存したバンドの温度依存性を発見した。鉄系高温超伝導体の超伝導発現機構を明らかにするためには、超伝導転移温度よりも非常に高温からの電子状態の変化をとらえることが重要であると考えられ、平成26年度は高温からの電子状態の変化にも注目したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型クライオスタット用低温マニピュレータの試作機が、目標到達温度に達しなかったが、様々な系に対して偏光依存性を含む電子状態の直接観測に成功しており、学術誌への投稿が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)引き続き新型クライオスタット用低温マニピュレータの開発を行い、さらなる低温化を目指す事 (2)鉄系高温超伝導体122系Ba(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2に対して3次元超伝導ギャップのドープ量依存性を詳細に調べる事 (3)様々な系において、超伝導転移温度よりも非常に高温からの電子状態の変化を調べる事 に重点を置く予定でいる。
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Research Products
(4 results)