2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世における南朝史享受をめぐる歴史資源の流通と人的交流についての研究
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13J02490
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
勢田 道生 皇學館大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歴史叙述 / 史学史 / 国学 / 有職学 / 思想史 / 南朝 / 近世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南朝に関する史書を対象として、第一に、伝本調査に基づき作者・成立時期・依拠資料などの基礎事実を確定し、第二に、これらの史書をめぐる歴史資源や言説の流通と影響、およびこれに関与する知識人の活動の実態を明らかにすることにより、近世学芸における知的資源の流通と人的ネットワークの実態を解明し、第三に、以上の検討を踏まえ、近世の南朝史享受の背景にある学芸の諸様相を明らかにすることを目的とする。 平成26年度は、近世における南朝史研究の大きな流れを形成する水戸藩の『大日本史』編纂事業について、『大日本史』草稿本を対象として、本文の成立過程や依拠資料の検討を進めるとともに、安積澹泊が執筆した『大日本史賛藪』(『大日本史論賛』)について、伝本の調査を行うとともに、その内容的特徴と後世への影響について論文を公表した。 また、寛政期からの流布が確認される『南朝公卿補任』と同書をめぐる人的交流については、検討の前提として、同書に記載される個々の人物の事績の解明を進めるとともに、同書の流布に重要な位置を占める柳原紀光や河本公輔に関する資料の調査・収集を行い、彼らをめぐる人的ネットワークの解明に努めた。 また、当該期の南朝史受容の問題に関わる有職家や国学者の活動については、本居宣長の学問の特徴や指向性について検討を進めるとともに、近世中期の有職家をめぐる蔵書形成や人的交流の実態を窺わせる資料の調査を行い、その読解と検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は主に、『大日本史』・『大日本史賛藪』についての調査検討、『南朝公卿補任』とこれをめぐる人的交流についての調査検討、近世中後期における有職家・国学者の学問と交流についての調査検討を予定していた。 これに対し、『大日本史賛藪』については、その特徴と影響力について論文を公表するとともに、『大日本史』については、重要と目される草稿資料について内容の検討を進めている。また、『南朝公卿補任』については、同書に記載される人物の事績について、また同書をめぐる人的交流について、資料調査により基礎的なデータをまとめることができた。有職家・国学者の学問については、本居宣長の学問の特徴について検討するとともに、当時の有職家をめぐる書物ネットワークに関し、注目すべき資料を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行った資料の収集と整理を踏まえ、27年度は研究成果の公表に重点を置いて研究を遂行する。特に、『南朝公卿補任』の内容や有職家の学問および人的交流の実態について基礎的事実を明らかにするとともに、近世の南朝史受容における思想的動向や国家意識の問題も視座に入れて検討を進めたい。
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Research Products
(1 results)