2013 Fiscal Year Annual Research Report
転位芯における侵入型原子の拡散メカニズムと炭素の転位偏析メカニズムの解明
Project/Area Number |
13J02497
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 明男 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 転位 / 固溶原子 / 炭素鋼 / 拡散 / 塑性変形 |
Research Abstract |
本年度の研究内容としては炭素がバルクから転位芯に移動する経路を特定するとともに, 鉄-炭素系のみでなくそれ以外の侵入型固溶原子-溶媒金属の組み合わせにおける拡散経路の特定を行った. そのためBCC鉄(0-11)すべり面に適用した幾何構造解析をより一般的にFCC, HCP構造, またはBCCの他のすべり面に応用した. 具体的には様々な種類の転位を任意のすべり面に持つ原子モデルを作成する. その面と, それと隣接する面のみを抜き出し, その転位芯の幾何構造を観察する. この解析を様々な結晶構造, すべり面に適用し, バルク中の幾何構造と比較する. これにより侵入型原子の転位芯内の拡散経路を特定し, さらにこれがこれまでの研究から推測されるようにこれが共役バーガーズベクトル方向であるかどうかを確認した. そして原子レベルの幾何構造解析を行った結果, まずFCC, BCC, HCPの主すべり面においては転位芯においてはバーガーズベクトルに共役な方向に高速拡散路が存在することが原子の幾何構造から確かめられた. さらに第一原理計算を用いた拡散経路に沿った活性化エネルギーを求めることにより, 幾何構造解析の妥当性をいくつかの具体的な侵入型固溶原子-溶媒金属の組み合わせによって確認した. その一方ですべり方向に共役な方向がなければ一般的な議論は難しく, 場合によりけりである. 従ってこれまで一般的に転位芯において侵入型原子の高速拡散が起きると考えられてきたがすべり面によりけりであると結論付けられ, 今後は実験においてもすべり面ごとに侵入型原子の拡散挙動を解析していく必要があると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BCC鉄のみならず, BCC, FCC, HCPという一般的な金属構造ごとにおける侵入型固溶原子の転位芯の拡散路をより一般的に突き止めることに成功した. すなわち求めた拡散路は炭素鋼のみでなく他の汎用金属にも適用できる. 従ってこの研究はその機械特性向上のための礎となる基礎研究となると思われ, 十分に研究が進んでいると自負する.
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Strategy for Future Research Activity |
一般的に塑性変形によって支配的な変形機構としては転位と双晶が挙げられる. これまでは転位と侵入型固溶原子の相互作用を考えてきたが, 双晶と侵入型固溶原子の相互作用も金属材料の機械特性に大きな影響を与えると考えられる. そこで転位-固溶原子のみでなく, 今後は双晶-侵入型固溶原子についても原子論的, エネルギー論的な解析を行うことを予定している. これにより, 固溶原子が塑性変形に与える影響を統合的に解析していく. そのために今後はまず双晶変形のメカニズムに関する研究を行うことを予定している.
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Research Products
(3 results)