2013 Fiscal Year Annual Research Report
財産権移転に関する類型化と所有権的構成による統一化
Project/Area Number |
13J02579
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
隈元 利佳 慶應義塾大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 権利移転 / 財産権 / 人格権 / パブリシティ権 / 肖像権 / フランス法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、財産権の移転について、物権移転や債権移転といった既存の枠組みに捉われない把握を行うことにある。この目的を達成するために、古典的な財産権移転にはなかった特徴を持つ現代的な権利移転類型について考察することが本研究の内容である。 具体的には、人の氏名、肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利である「パブリシティ権」について研究を行う。パブリシティ権に着目する理由は、同権利は、性質上取引になじまないと言われる人格要素に関する権利であるがゆえに、財産的価値を捉えるための権利とはいえ、移転を考える上では古典的な財産権とは異なる配慮が求められるからである。 今年度は、パブリシティ権の移転についての研究の基礎作業として、パブリシティ権の法的性質論の考察を行った。この点、日本においては、人格権と見たり、財産権と見たり、その両方の性質を併せ持った権利と見たりという様々な見解が唱えられている。そのため、フランス法における「イメージの権利」についての議論に示唆を求め、以下のことを明らかにした。 フランスにおいては、日本におけるパブリシティ権のような概念はなく、肖像に特化すれば「イメージの権利」というひとつの権利の名の下で、肖像が有する精神的利益と財産的利益の双方を保護している。そして、この「イメージの権利」は人格権の一種とされる。このような点は、人の氏名・肖像等が有する財産的利益についての権利がパブリシティ権と呼ばれて肖像権と別個に発達してきた日本とは異なる。その一方で、フランスにおいても、「イメージの権利」の二面性として財産的側面と非財産的側面があることを指摘する議論がなされている。これらの点は、日本におけるパブリシティ権の法的性質論への示唆の端緒となると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パブリシティ権の移転の可否及び、移転可能である場合のそのメカニズムを解明する段階には至っていないが、その解明の基礎として重要であるパブリシティ権の法的性質論に関して、日本法のパブリシティ権とフランス法の「イメージの権利」の共通点・相違点をある程度明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、フランス法における「イメージの権利」の法的性質についての検討を行う。その上で、パブリシティ権の移転の可否及び、移転可能である場合のそのメカニズムを解明する。この解明においては、日本においてパブリシティ権の譲渡性が問題になったとされる裁判例及び、フランスにおける同様の事案についての分析が中心となる。
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