2013 Fiscal Year Annual Research Report
Brassica rapaにおける生殖的隔離遺伝子の同定
Project/Area Number |
13J02584
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
殿﨑 薫 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アブラナ / 生殖的隔離 / 種・属間交雑 / 雑種胚崩壊性 / 胚乳発生 |
Research Abstract |
これまでに、Brassica rapaとRaphanus sativusの属間交雑において、B. rapaの雑種胚崩壊性に関わる3つのQTLを同定している。B. rapaの雑種胚崩壊性に関わるQTLは、その遺伝子型組合せによって雑種形成率が大きく異なる。そこで、R. sativus以外の種との種間交雑においても同様の効果を有するのかを調査するため、B. rapaの近縁種であるB. nigra、B. oleracea、B. napusとの種間交雑を行った。その結果、B. oleraceaの花粉を交雑した場合では、雑種種子は得られなかったが、B. nigra及びB. napusの花粉を交雑した場合に、雑種種子が得られた。特に、R. sativusとの交雑で最も雑種形成率が高い遺伝子型組合せの系統において、非常に高い雑種形成能が見られた。この結果から、雑種胚崩壊性QTLの効果は、花粉親が特定の種に限定された効果ではない可能性が考えられる。また、B. napusとの雑種形成率に関与するという結果は、生殖的隔離機構の解明だけでなく、遺伝子組換え作物の組換え遺伝子拡散問題にも貢献できると考えられる。 B. rapaとR. sativusとの属間交雑から得られた雑種種子の発達日数ごとのパラフィン切片を作成し、雑種種子の発達様式を組織学的に観察したところ、雑種種子では、胚発達の停止と共に胚乳発達の遅延が観察された。胚乳は、胚発達を補助する組織であるため、属間交雑による雑種胚崩壊性の原因は、雑種種子における胚乳の発達遅延にある可能性を示した。 QTL領域内に座乗するBrFIE及びBrMSI1の2つの遺伝子は、共に胚乳発生において重要な働きをする遺伝子であると考えられるため、属間交雑における雑種形成能を決定する遺伝子の候補であると考えられる。そこで、BrFIE及びBrMSI1それぞれについて形質転換を試みた。しかし、形質転換体が得られず、雑種形成能との関連は調査できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
雑種胚崩壊性の原因が、胚乳である証拠を示すことができ、その有力な候補遺伝子を挙げることができたが、形質転換による候補遺伝子の証明ができなかったために、原因遺伝子を同定することができなかった。これは、B. rapaの再分化効率が極めて低いことが原因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
形質転換による証明は、残り期間では困難であるため、候補遺伝子に制御される下流遺伝子の解析を行うことによって、候補遺伝子が雑種胚崩壊性への関連の有無を考察する。また、胚乳発生に関わる遺伝子群の解析を行うことで、B. rapaの雑種胚崩壊性の分子機構を推定する。
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Research Products
(1 results)