2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J02605
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松 麻理奈 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光 / 高分子 / 結晶化度 / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
種々の高分子について、構造変化とテラヘルツ(THz)スペクトルの関係を解析し、THz分光を用いた高分子の構造評価手法を探ると共に、スペクトル解析で得た知見を基盤として、THz波照射による高次構造の制御に向けた基礎的な検討を行った。 材料の構造変化がTHzスペクトルに与える影響を明らかにするために、前年度は架橋度に注目して、ポリエチレンに対し架橋度とTHzスペクトルの相関を検討した。今年度は結晶化度に着目し、結晶化度を変えたポリエチレンナフタレート(PEN)に対し、X線回折法や示差走査熱量分析により結晶化度を求め、THzスペクトルと比較した。その結果、2.15THzピークは結晶性に関連していること、および同THzピークからPENの結晶性を評価できる可能性を示した。またガンマ線照射量や無機フィラー添加量を変えたエチレンプロピレン共重合体について、THzスペクトルと赤外スペクトルを比較し、THz分光を用いて、酸化や無機フィラーの添加量が評価できることを明らかにした。 またTHz光による高分子高次構造の制御に向け、THz光により制御可能な分子間の結合を明らかにすべく、デオキシリボ核酸(DNA)水溶液を対象に、安定的なTHzスペクトル取得方法についての検討と、THzスペクトルの解析を行った。まずTHz分光測定に適した基板を検討し、THz領域における透過率や化学的安定性から、ダイアモンド板が適切であることを確認した。次に、塩基の種類や鎖長を変えた一本鎖のDNA水溶液についてTHzスペクトル解析を行った。その結果、塩基の種類によらず3~9THzに広い吸収が現れ、チミンを塩基としたDNAにのみ強度がチミンの総数に比例する吸収が12.7THzと14.7THz付近に現れることを見出し、チミン数の関数として吸収強度を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ(THz)分光による高分子物性評価法の確立に向けた、高分子のTHzスペクトル解析は概ね順調に進展した。前年度に引き続き、種々の高分子に対して、THz分光測定を行うと共に、種々の機器分析や量子化学計算結果との比較を行い、THzスペクトルと高分子の構造変化の関係を解析、検討した。本年度は、ガンマ線照射量や無機フィラー添加量を変えたエチレンプロピレン共重合体やエチレン酢酸ビニル共重合体、結晶性を変えたポリエチレンナフタレート等について、THzスペクトルと赤外スペクトル、X線回折スペクトル、熱分析結果などを比較した。更に、THzスペクトルについては、ローレンツ関数を用いピーク分離を行い、高分子の構造変化に伴い吸収強度がどのように変化するか定量的に解析した。その結果、THz分光を用いて、酸化の程度を評価できること、およびタルクなどの無機フィラーの添加量を定量できることを明らかにした。 また、THz光照射による高分子の高次構造制御を行うべく、THz光照射による構造変化が起こり易いと考えられるデオキシリボ核酸(DNA)水溶液を対象に、THz光照射実験に向けたTHzスペクトル解析を行った。DNA水溶液のTHzスペクトルを安定して取得するための基板の検討により、THz光照射実験の治具に、適切な材料を検討するための知見を得ることができた。また、スペクトル解析結果から、THz光照射実験の際のTHz光源について、その周波数を検討するために有益な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究内容を一層深めつつ、当初の計画に則って研究を推進し、得られた結果は国際会議や査読付き学術論文誌等で発表する。 本年度に引き続きポリエチレンナフタレートなどの構造の単純な高分子のシート試料に対し、結晶性等の構造変化がTHzスペクトルに与える影響を検討し、THz分光法を用いた各種特性の定量化を試みる。また表面処理等を行った無機微粒子や、無機微粒子を添加したエチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体などのコンポジット材料に対し、THz分光測定と第一原理計算を用い、高分子と無機微粒子、および表面処理剤間で生じる分子間相互作用がTHzスペクトルに与える影響を明らかにする。更に、濃度や分子鎖長を変えたデオキシリボ核酸(DNA)の高分子溶液について、濃度と分子鎖長がTHzスペクトルに与える影響について検討する。試料には入手可能な他の多くの高分子を取り入れ、その結果を総合的に検討し、THz分光が高分子のどのような特徴を調べるのに適した実験法となり得るかを明らかにする。 上記において検討したTHzスペクトルと高分子構造の対応関係をもとに、高分子の高次構造制御を試みる。DNAを新たな機能性高分子と捉え、その溶液に対し、THz光を照射し、THz光照射に伴うスペクトルの経時変化を観測し、THz光照射の影響を受けるピークの帰属の検討を行う。また、THz光照射により、どのような分子間結合の変化が誘起されるかを明らかにし、機能性高分子の作製法としてのTHz光照射の基礎的な検討を行う。
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Research Products
(19 results)