2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J02638
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千秋 元 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 種族II星 / 星形成 / 低質量星 / 星間物理 / 低金属量星 / ダスト / 銀河形成 / 初代銀河 |
Outline of Annual Research Achievements |
大質量(10--1000太陽質量)の初代星から、現在のように小質量星(0.1--1太陽質量)が形成されるようになる条件を求めている。これまでの研究により、星形成ガス雲中の金属量が上昇し、ダスト冷却率が増加することで、ガス雲の分裂が促進され、星質量の遷移が起きたことがわかっている。本研究では、初期宇宙におけるより現実的なモデルを用いて、星形成ガス雲の収縮および分裂過程を求めた。加えて、本年度は3次元シミュレーションコードの解像度を上げる方法について改良を行った。 まず、先行研究では、初期宇宙におけるダストの性質(組成とサイズ分布)は簡単のため現在と同じ値を用いてきた。しかし、初期宇宙ではダストの供給が大質量の初代星の超新星に限定されることと、収縮ガス雲中のダスト成長によって、ダストの性質は現在とは異なる。本研究では、これら二つを考慮し、初期宇宙のより現実的なダストモデルを用いてガス雲のダスト冷却率による温度進化および分裂条件を準解析的に求めた。その結果、臨界金属量はモデルによっては現在のものと最大1桁程度大きくなり、ダストモデルをより厳密に考慮する必要があることが分かった。 続いて、SPH 流体コードで3次元計算を行う準備として、中心部の質量解像度を上げる粒子分割という方法の改善を行った。そして、上記のダストモデルと新しい粒子分割法を実装した3次元流体コードを用い、宇宙論的シミュレーションから抽出したガス雲に現在の金属量の百万分の1と一万分の1を与えて収縮過程を計算し、ガスの分裂条件を求めた。その結果、前者はダスト冷却が不十分で分裂せず、初代星と同様に単一の原始星となる。一方、後者は、特に炭素とフォルステライトのダスト成長が急激に起きることでダスト冷却が効果的となり、円盤が分裂分裂し、低質量星が形成されることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は低金属量星形成の研究に加え、初期宇宙におけるより現実的なダストモデルの構築を行うことができた。超新星により形成されたダストは破壊も受け、ガス雲を汚染する時点では金属に対するダスト量(凝縮率)は現在より1--2桁小さい。一方、ガス雲の収縮過程でダスト成長が起きると、凝縮率は増加する。これらの効果の差し引きにより、ダスト冷却率は現在とは異なることを示した。これは、星形成のみならず、こう赤方偏移銀河の進化など他の様々な宇宙物理学的な問題に応用できる発見である。また、本研究では粒子分割法と呼ばれる方法の改善について着想し、実行することができた。粒子分割法は、収縮ガス雲など密度幅の大きい流体現象のシミュレーションにおいて、計算資源節約のために中心部の解像度を段階的に上げる操作である。先行研究では解像度の不足した粒子(親粒子)の周囲に等方的に質量の小さい粒子(娘粒子)を配置していたが、これでは非等方な密度構造を均してしまうことがわかった。そこで本研究では、ボロノイ図を用いて親粒子の配置に沿って娘粒子を置くことで、その問題を改善した。この粒子分割証も、衝撃波など他の様々な流体現象に応用ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、シミュレーションによって収縮過程を計算しているガス雲の初期パラメータは限られているため、次年度はより広いパラメータ領域に対して系統的にガスの分裂条件を求める。まず、金属量は0から10-3太陽金属量を仮定する。また、ダストモデルは初代星の超新星の親星の質量に依存する。基本的に、親星質量が大きいほど、シリコンなどのより重い元素によって構成されるシリケイトの質量割合が大きくなる。次年度は、本年度計算を行っている30太陽質量のものに加え、13太陽質量のモデルについても調査を行う。最後に、これはまだ先行研究ではあまり知られていないことであるが、ガス雲の熱進化はガスの密度プロファイルや回転速度に依存することが特別研究員のこれまでの研究で明らかになってきた。たとえば回転速度が大きくなるにつれて遠心力によってガス雲の収縮速度が小さくなると、断熱圧縮加熱と放射冷却率が釣り合う温度が小さくなる。さらに、ガスの冷却剤であるH2, HD分子などの形成時間に対してガス雲の収縮時間が小さくなるので、冷却率が上昇することで、ガス温度の収縮時間依存性はより顕著になる。次年度は密度プロファイルのべきと回転速度をいくつか変えることで、その熱進化への依存性をより詳細に調査する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The Origin of the Most Iron-poor Star2014
Author(s)
Marassi, S.; Chiaki, G.; Schneider, R.; Limongi, M.; Omukai, K.; Nozawa, T.; Chieffi, A.; Yoshida, N.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 794
Pages: 100--111
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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