2013 Fiscal Year Annual Research Report
インド、ミゾラム州のトライブ市民社会-丘陵地帯と世界のつながり-
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13J02652
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉沢 加奈子 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | インド北東部 / ミゾラム / 地域研究 / エスニシティ / 市民社会 / 公共圏 / 境界 |
Research Abstract |
【研究目的】 本研究の目的は、インドの丘陵地域と大都市、そして海外をつなぐ広大なネットワークを構成するマイノリティ集団の社会に関する歴史的動態を研究することによって、地域独自の市民社会のなりたちを明らかにすることである。特に平成25年度は、研究対象とするエスニック集団「ミゾ」が集中的に居住するインド、ミゾラム州内における青年団をはじめとする諸団体に着目し、地域社会の市民社会的諸団体の動態を明らかにすることを試みた。また、同州で非常に強い影響力を持つキリスト教長老派教会の史料にあたり、青年団設立初期の時代における隣接地域や日本とのトランスナショナルな関係についての予備研究を行っている。 【現地調査から得られたデータの意義、重要性】 25年度は約3ヶ月間の現地調査を行い、主に調査対象である青年団やキリスト教青年団体の活動を参与観察した。調査で得たデータの二部は、政治権力に対しある程度自律的な集団を保持するという、ミゾ人による地城の社会結合のありかたが、植民地化以前の首長一若者宿関係にだけでなく、現代にもみられることを実証するために有効だと考える。 【予備研究】 26年度に予定しているビルマ国境の農村部での調査に向け、キリスト教長老派教会の別冊誌として青年団が執筆していた機関紙のうち、第二次大戦中に発行されたものを分析している。当時の青年団が日本軍のピルマ支配によって翻弄されながらも、国境をこえた移動を行い、隣接地域の人々とやりとりをしていたことや、遠い戦地で戦うミゾ人同胞を思い、故郷の美しさをたたえ、英国追従の近代化に対するオルタナティブを模索する姿が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果発表については、当初目指していた達成度より遅れているものの、25年度の発表で多くの有益なコメントが得られ、これまで曖昧であった理論構築の部分を補強するのに寄与した。現地調査では、予想よりも多くのデータを収集でぎ、現地の人々の協力も期待以上に得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は特に、史料分析と平行して農村調査を集中的に行い、「青年団は英国の支配に表面上従属し、近代化を希求する一方で、隣接地域の山地民や日本軍と変則的でトランスナショナルな接触をもつことで、世界との新たなつながりを見出し、それが独自の文化的ナショナリズムの醸成に寄与した」という仮説を実証することを目指す。また、その成果を投稿論文として発表する。
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Research Products
(1 results)