2014 Fiscal Year Annual Research Report
雄マウス求愛歌に対する雌の性嗜好性の脳内表象:聴覚-嗅覚シグナルの感覚統合
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13J02670
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
菅野 康太 麻布大学, 獣医学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超音波コミュニケーション / マウス / 性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
雄の求愛発声(歌)から雌が受容する情報は何か? それを明らかにするために、求愛発声には、情動状態や個性など、雄のどのような情報が含まれるのかを現在主流な実験系統であるB6(C57BL6/J)を用いて、明らかにした。まず、発声量の個体差が大きいということが分った。そこで、他の行動との相関を検討したところ、不安や活動量、攻撃性などは発声量と相関をしなかったが、性行動である雌へのマウントの潜時と発声量が有意な逆相関をした。つまり、発声が多い個体は性行動を始めるのも早い。また、射精後は発声が全く観察されなかった。以上のことから、雄マウスのUSVsは、主として性的動機付けの表出であると考えられる。歌構造においても個体差が認められ、B6の主要なシラブルの一つ、Upwardは発声量と負の相関を、別の主要なシラブルであるJumpは正の相関を示すことが分かった。また、同一個体内でも同様に、発声が少ないときはUpwardの割合が多く、発声が多いときにはJumpが多いという個体内変動があることも分かった。これらを合わせると、発声量とそれに随伴して変化する歌のパターンは、性的動機付けの個体差を反映しており、その時々の状況によってゆらぐ情動状態(性的動機付け)の表出でもある、と考えられる。このことから、シラブル発現の変化は、言語的な文法の “能力” の変化というよりも、動機付けに基づいて状況依存的に変化する “多弁さ” と “語彙” の様なものであると考える方が妥当と思われる。加えて、B6の主要なシラブルの発現変化が発声量と明瞭な相関関係にあることから、シラブルパターンの行動学的な意味は、発声量と同様に性的動機付けの表出であり、指標の価値としては発声量と近似出来ると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
求愛発声に含まれる意味成分が同定され、その発声を雌に曝露するために必要な新規超音波スピーカーも、改良を重ねた末、ほぼ完成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
準備は整ったものの、仮説検証型であるため、実験結果が当初の予想に反する可能性もある。しかし、実験系の準備段階で、雄における発声の行動学的特性や、その神経メカニズムやホルモン作用、発達に伴う音声の変化、発声に対する雌の応答の経時的変化など、派生した研究テーマを複数得た。どのような結果になっても、マウス雌雄間超音波コミュニケーションに関する基礎的で重要な知見が得られると期待出る。
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Research Products
(7 results)