2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J02676
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
天野 文子 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カンボジア / メコン河 / リン / 窒素 / 流達率 / 栄養塩収支 / 氾濫農業 / 持続可能性 |
Research Abstract |
本研究の目的は, 大河川の洪水氾濫による肥沃化の効果を評価することである. 肥沃化の効果を評価することは, 適切な治水・利水・開発や環境に配慮した流域管理, 持続可能な農業の実現のために必要である. 目的達成のため, メコン河におけるケーススタディやメコン河と他の河川との比較, 他の河川における肥沃効果の評価等を行う. 本年度は主にメコン河におけるケーススタディ1. 現地観測, 2. 栄養塩収支計算, 3. 栄養塩輸送モデルの構築を行った. 1. メコン河氾濫原において氾濫水の栄養塩濃度や土壌中の栄養塩量を調査する観測を行い, これまでに同地点で観測したデータと合わせて考察した. 期待していた明確な季節変化が示されない一方, 氾濫水位が低い時期に栄養塩濃度が高くなる傾向が示された. また, 農業用のゲート付近における観測結果から, ゲートの効果を評価した. スルースゲートを用いることは, 乾季にも効率的に氾濫水を利用可能にするだけでなく, 効率的な栄養塩の利用を実現していることが示された. 2. 観測結果を用いて水田における栄養塩収支を計算した. 洪水氾濫によりもたらされる栄養塩が稲作に与える影響を寄与率と定義し, 肥沃化の効果を定量的に評価した. また, 寄与率から農業の持続可能性についても評価を行った. 3. 洪水氾濫水理モデルに流達率を用いた栄養塩輸送計算を組み合わせることにより, 栄養塩輸送モデルを構築した. 前述した寄与率とモデルの計算結果を用いて, 空間的に肥沃化を評価した. 河岸部および氾濫原の端部において寄与率が高いことや, 洪水氾濫による肥沃効果の大きい氾濫原の一部では無施肥の稲一期作が持続可能であることが示された. また, 下水道の整備など将来予想される状況の変化をモデルに組み込むことにより, 人々の生活の変化が肥沃効果に影響を与える可能性があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
栄養塩輸送モデルの構築に想定以上の時間が必要であり, モデル構築がやや遅れた. モデル構築後に検証のための現地観測等を行う予定であったが, 構築の遅れに伴い検証に適切な時期の見極めが遅れるなどしたため, 予定していた検証のための観測を行うことが出来ず, 他の方法で検証を行う必要があった.
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Strategy for Future Research Activity |
メコン河における現地観測により, 栄養塩濃度のバラつきが大きく栄養塩濃度に影響を与える外的要因が多いことが示された. 今後はメコン河における詳細な現象の解明よりも, 他河川の洪水氾濫の肥沃化の効果の評価やメコン河との比較等に重点を置いて研究を進める. 経済指標や流域面積などの指標と栄養塩の間の関係について解析・考察を行う. また, 栄養塩輸送モデルを用いて将来予測や過去の状況について更なる検証・考察を行う予定である. これらにより, 肥沃効果を評価するための普遍的な方法の構築に繋げたい.
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Research Products
(3 results)