2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J02676
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
天野 文子 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 洪水氾濫 / 栄養塩輸送 / 肥沃効果 / メコン河 / カンボジア / 作数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,大河川の洪水氾濫による肥沃化の効果と農業への影響を評価することである.メコン河下流域を対象とし,主に以下二つの研究を行った. 第一に,昨年度構築した洪水氾濫計算と栄養塩輸送計算からなる栄養塩輸送モデルを改良した.特に栄養塩輸送計算について,流達率を用いた計算から沈降速度を用いた計算へと改良し,さらに風の影響を考慮した.これにより,モデルの精度が向上した.特に,農業を行う上で重要な土地である氾濫原端部における精度が向上した.また,肥沃化指標を定義し,肥沃効果の有無と効果の程度を評価した.この指標は,農業生産量などに左右されずに洪水氾濫による肥沃効果を評価するものである.改良されたモデルから肥沃化指標を求め,肥沃効果を空間的に評価した. 第二に,水位・水量・浸水期間・栄養塩量の面から洪水氾濫が農業に与える影響を評価した.洪水氾濫がもたらす水は氾濫原における農業に不可欠であるが,水位が高すぎる・浸水期間が長すぎるなど負の影響もある.洪水氾濫計算の結果を元にこれらを評価し,農業形態を分類した.ここで,各地点において稲作が最大で何期作可能であるかを示す値をポテンシャル作数と定め,水の側面からと栄養塩の側面から,および水・栄養塩の両面からそれぞれのポテンシャル作数を求めた.水の側面から考えると三期作が可能な地域はなく,ポテンシャル作数が一期作に満たない地域もあることが示された.栄養塩の側面からは氾濫原の多くの地域で三期作が可能であることが示された.両面を総合すると,二期作が可能な地域は氾濫原の一部に限られることが示された.また,氾濫原の多くの地域で水が制限要因になることがわかり,氾濫原において農地を拡大するためには適切な水管理が必要であることが示唆された.以上により,洪水氾濫が農業に与える影響を評価した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究目的においては,昨年度に広域モデルを今年度にローカルモデルを構築・精緻化する計画であったが,昨年度のモデル構築に想定以上の時間を要したために研究が遅れた.一方で,昨年度に一部変更した研究計画に対してはおおむね順調に進展している. モデルの精度検証に用いるための現地観測やモデルの妥当性検証,評価方法の普遍化はおおむね順調に行われている.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の過程において,氾濫水の肥沃効果を栄養塩に限定するのではなく,より広義的に水・栄養塩の双方の面から農業への影響を評価する必要性があることがわかった.そのため,洪水氾濫規模が肥沃効果に影響を及ぼすとかんがえられる.今後は,洪水氾濫の規模を含めて肥沃効果を評価する.また,食糧生産の観点からも考察を行う.
|
Research Products
(5 results)