2013 Fiscal Year Annual Research Report
キラルな遷移金属錯体の触媒的不斉合成法の開発と応用
Project/Area Number |
13J02743
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒江 祥永 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 面不斉 / メタセシス / 触媒的不斉合成 / 不斉遷移金属錯体 |
Research Abstract |
本研究は「面不斉遷移金属媒体」を「触媒的不斉合成する」ことを目的としている。本年度は、「不斉閉環メタセシス反応」を用いた「面不斉(π-アレーン)クロム錯体」と「面不斉ジルコノセン」の触媒的不斉合成の開発に取り組んだ。 (πアレーン)クロム錯体については、これまでに報告しているラセミ基質を用いた面不斉クロム錯体の触媒的不斉合成法(Angewandte Chemie Internationol Edition, 2012年, 51巻, 2951-2955ページ)をさらに拡張し、プロキラルな基質を用いた面不斉クロム錯体の触媒的面不斉合成を達成した。具体的にはアレーン配位子上に2つのプロペニル基とインドリル基を、ホスフィン配位子上に1つのアリル基を導入した(π-アレーン)クロム錯体を合成し、不斉メタセシス触媒を作用させることによって光学活性な架橋生成物を与える反応系を見出した。なお、この反応過程は「面不斉」と「軸不斉」を同時に制御することができるユニークな反応で、ほぼ完ぺきな立体選択性/反応性で進行する。また、この反応を得られる光学活性クロム錯体は、反応後にクロム-カルボニル部位を除去することにより、光学純度を損なうことなく「C-N軸不斉」有機化合物へと効率的に変換することができることも見出した。 面不斉ジルコノセン錯体の触媒的不斉合成については、インデニル配位子上に2つのメタリル基、シクロベンダジエニル配位子上に1つのビニル基を導入したジルコノセン基質に対し、不斉閉環メタセシス反応を行うことによって光学活性な架橋ジルコノセンの触媒的不斉合成を達成した。なお、面不斉ジルコノセンの触媒的不斉合成或は本反応が初めての例である。さらに、この反応で得られる光学活性架橋ジルコノセンは、根岸らが報告している不斉カルボアルミニウム化反応において不斉媒体として作用することも見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで開発してきた「不斉閉環メタセシス反応を利用した面不斉フェロセン類の触媒的不斉合成法」をベースとして、さらなる反応系の開発を目指すというのが本年度の計画であった。前項で述べたように、本年度は新たに面不斉(π-アレーン)クロム錯体、又は面不斉ジルコノセン錯体について、不斉閉環メタセシスを利用した触媒的不斉合成を達成している。さらには、開発した反応によって得られた「面不斉錯体」が不斉配位子、不斉触媒として利用可能なことを見出すに至っており、「当初の計画以上に進展している」と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね順調に研究が進行しており、当初の年次計画に従い、本年度の検討によって得られた種々の光学活性遷移金属錯体について、不斉有機合成への応用を検討する。また、得られた結果について論文掲載/学会発表などの研究広報活動にも努める。
|
Research Products
(9 results)