2013 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡グリーン関数を用いた微視的な量子スピンポンピング理論の構築
Project/Area Number |
13J02747
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲田 光樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | スピン流 / スピンポンピング / マグノン / スピントロニクス / 国際研究者交流 / スイス / 国際情報交換 / フランス : アメリカ |
Research Abstract |
近年、従来の電荷のみならず電子のもう一つの情報、スピン、の積極的な活用を試みる研究分野「スピントロニクス」が飛躍的な進展を遂げており、主要課題は「電子スピン角運動量の流れ、スピン流生成」である。電荷の流れである「電流」がジュール熱によるエネルギーの散逸を伴うのに対し、「スピン流」は上向きと下向きのスピンを持つ電子が互いに逆向きに運動している状態であり、正味の電流はゼロで、ジュール熱によるエネルギー散逸を生じないという特色を持つ。これまでのエレクトロニクス技術に基づくコンピュータや通信機器は、ジュール熱により多大なエネルギー損失を生じるという困難を抱えている。そのため、ジュール熱による散逸を伴わないスピン流は、基礎物理学の探求のみならず、省エネルギーデバイス開発の基礎研究の観点からも非常に重要である。 これまで、スピン流はスピンポンピング法と呼ばれる手法により生成され、主に古典力学に基づいて解析されてきた。本研究で、従来見落とされていたスピン流生成に必要不可欠な「本質的に量子力学的な非平衡ダイナミクス ; スピン反転過程」を非平衡グリーン関数法をもちいることで陽に理論にとりいれることに成功し、国内外の実験結果に整合する量子スピンポンピング理論を構築した。さらにその結果、従来の手法とは質的に異なる、新たなスピン流生成手法を理論的に提案することに成功し、実験での検証方法を明示した。 以上のように本研究は、従来の古典力学に基づくスピントロニクス研究に、粒子の量子性(統計性)と非平衡ダイナミクスを陽にとりいれることで理論と実験を紡ぐ架け橋となり、量子的信報を低エネルギーコストで積極的に活用・制御する「量子情報スピントロニクス」の礎を築く研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のように、本研究の主目的である「量子力学的なスピンポンピング理論」を構築し、論文を学術誌に発表・公開して複数のセミナー、学会等で発表を行った。現在は本研究から発展したプロジェクトに取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究をさらに発展させ、量子力学的な粒子(ポーズ粒子)特有の「凝縮」という巨視的量子効果を活用した制御性の高い新たなスピン流生成手法を提案し、「量子情報スピントロニクス」に新たな潮流を切り拓く。特に、幾何学的・量子力学的効果である「Berry位相」を活用して「永久スピン流」の可能性を探索し、実験方法を理論的に提案する。
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Research Products
(3 results)