2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J02764
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鶴田 健二 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蒸発散 / 人工林管理 / 吸水深度 / 生態系モデル / 水資源 |
Research Abstract |
本研究課題「人工林管理が水資源量に及ぼす影響の評価」の遂行にあたり, ①樹液流計測に基づく蒸発散量推定法の検証, ②人工林の長期的推移に伴う植物生理機能の変化の抽出, ③日本各地域における蒸発散量の推定, の3つの研究内容を設定している. 2013年度は主に①を実施し, ②の実施のための準備を行った. 蒸発散量推定法に必要なデータを得るために, まず試験流域(ヒノキ人工林で覆われている)内において調査プロットを設置した. このとき, 流域内の不均一な場の条件が樹液流や樹木の水利用に及ぼす影響を把握するために, 谷部から尾根部にかけて斜面長29.3m, 面積0.024haの調査プロットを設定した. 尾根部では谷部比べて土層厚が薄く, 生育する樹木の個体サイズも小さかった. また, 尾根部のほうが生育する樹木の本数も少なかった. 水の安定同位体比計測による樹木の吸水深度計測の結果, 土壌の水分状態に関わらず谷部で表層~深度70cmまで, 尾根部で表層~深度40cmまでで吸水していることが分かった. 樹木根の分布と併せて考えると, ヒノキは根が発達している土層全域で吸水しており, 吸水深度の違いは根の分布の違いによることが分かった. 樹液流計測の結果, 本試験地は一斉林にも関わらず個体ごとに多様な樹液流速が観測された. しかし, 観測された樹液流速は他のヒノキ人工林において観測された値とほぼ同等であり(Tsuruta et al, 2013), 同一種内では林分間での樹液流速の大きさに明瞭な差異がないことが示唆された. 得られた樹液流データを基に単木蒸散量を計算したところ, 尾根部に生育する個体サイズが小さい樹木の単木蒸散量は小さく, 谷部に生育する個体サイズが大きい樹木の単木蒸散量は大きい傾向があった. 以上のことより, ヒノキは流域内の地形や土壌の水分環境に応じた個体サイズや密度で生育しており, これが蒸散量にも大きく影響していることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はモデル化に必要なフィールドデータの取得に専念し, 必要なデータをほぼ取得することができた. さらに, モデル化のためのパラメーター決定まで進んでいる. フィールド観測時に新たな研究課題も発見し, それにも着手できたことから, 順調に研究が進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
必要なデータを本年度に取得できたことから, 今後はモデルのバリデーション作業を行う. また, 他のアプローチで取得されているフィールドデータも整理し, このデータもバリデーション作業に用いる予定である. さらに次の展開を見据えて, モデルの広域展開に必要なデータの収集やクオリティチェック作業も進める予定である.
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Research Products
(9 results)