2014 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の報酬依存的行動可塑性をもたらす神経回路制御機構の解明
Project/Area Number |
13J02785
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
塚本 聡美 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Cエレガンス / 神経回路 / 行動可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、線虫の温度学習行動をモデル系として、動物の行動可塑性をもたらす神経回路制御機構の解明を行っている。線虫は、餌のある条件で飼育されると、温度勾配上を過去の飼育温度に移動するが、飢餓を体験した後は、飼育温度に移動しなくなる、という報酬依存的な行動可塑性を示す。当研究室のこれまでの報告から、セロトニンの投与は餌あり条件を、オクトパミンの投与は餌なし条件を疑似することが示されており、これらのモノアミンが報酬依存性を制御している可能性が示唆された。そこで本研究では、温度学習行動の行動可塑性におけるモノアミンの作用原理の解明を目的とし、分子遺伝学的な解析を行った。 現在までの本研究では、この行動において、内在性の神経伝達物質である、オクトパミン、セロトニンが、それぞれ飢餓情報と餌情報の伝達に必要であることが示された。すなわち、オクトパミン欠乏変異体では、餌なし条件で温度学習行動に異常を示し、セロトニン欠乏変異体では、餌あり条件で異常を示すことが明らかとなった。また、変異体解析から、飢餓情報はOCTR-1オクトパミン受容体を介していることがわかった。加えて、octr-1遺伝子を、線虫の温度受容・記憶神経細胞であるAFD神経細胞で発現させると温度学習行動を変化させることから、OCTR-1がこの細胞で機能し、行動を制御している可能性が示唆された。 今年度においては、モノアミン(オクトパミン等)の下流で機能する分子として知られる、PKA(Protein kinase A)に着目した解析を行い、PKAの主要な機能細胞がAFD神経細胞である可能性が示唆された。今後、更なる解析により、動物の行動可塑性を生み出す機構の根本原理の解明に貢献するものと期待する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、線虫の温度学習行動をモデル系として、動物の行動可塑性をもたらす神経回路制御機構の解明することである。前述のように、現在までに、内在性のオクトパミン、セロトニンが、それぞれ飢餓情報と餌情報の伝達に必要であることが示した。また、変異体解析から、飢餓情報はOCTR-1オクトパミン受容体を介していることを明らかにし、その機能細胞がAFD神経細胞である可能性が示唆された。今年度においては、モノアミン(オクトパミン等)の下流で機能する分子として知られる、PKA(Protein kinase A)に着目した解析を行い、PKAの主要な機能細胞がAFD神経細胞である可能性が示唆された。これらの結果は、線虫の温度学習行動をモデル系として、動物が行動可塑性を示す機構の一端を明らかにしたこととなり、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまでに、報酬依存的な線虫の温度学習行動において、内在性のオクトパミン、セロトニンが、それぞれ飢餓情報と餌情報の伝達に必要であることが示された。しかしながら、これらの神経伝達物質がどのように神経回路を制御し、行動を制御するかは、未だ不明な点が多い。今後は、オクトパミン、セロトニンが神経回路制御する機構について、カルシウムイメージングを利用した生理学的な解析や、変異体を用いた分子遺伝学的解析をさらに進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)