2014 Fiscal Year Annual Research Report
ロイコトリエンB4受容体BLT1が規定する新規樹状細胞サブセットの機能解析
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13J02797
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
市木 貴子 順天堂大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生理活性脂質 / GPCR / 樹状細胞 / BLT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ロイコトリエンB4受容体BLT1の発現量の違いにより規定される新規樹状細胞サブセット(BLT1hi、BLT1lo)の免疫応答における役割を明らかにすることを目的とし、BLT1の発現量で区別される樹状細胞サブセットの病態生理学的意義の解明を行っている。 両サブセットのサイトカインプロファイルを比較検討したところ、Th1分化誘導を引き起こすIL-12p35の発現がBLT1hi樹状細胞において高く、T細胞増殖誘導を引き起こすIL-2の発現がBLT1lo樹状細胞において高いという結果が得られた。また、これらの結果とTh1分化誘導とT細胞増殖の実験結果もまた一致した。そこで上記のサイトカインプロファイルの違いが何に起因するのかを探索した。その結果、TLR9リガンドであるCpG DNAで刺激した時に、BLT1hi樹状細胞ではp38 MAPKが、BLT1lo樹状細胞ではp65 NF-κBサブユニットの活性化が優位に引き起こされる事がわかった。また、この細胞内シグナル伝達経路の差は、TLR9の細胞内局在の違いによってもたらされることもわかった。 また、樹状細胞の機能において、リンパ節への移行はT細胞へ抗原提示するために重要なステップであるが、この機能についてもBLT1hi樹状細胞とBLT1lo樹状細胞を用いて検討した。TaxiScanを用いてリンパ節へのホーミングケモアトラクタントであるCCL21に対する走化性を検討したところ、BLT1lo樹状細胞はBLT1hi樹状細胞に比べて、とても強い走化性を示す事がわかった。また、BLT1hi樹状細胞とBLT1lo樹状細胞を別々にラベリングし、footpadへ移入し、膝下リンパ節へのホーミングを解析したところ、in vitroの結果と相関して、BLT1lo樹状細胞はリンパ節へ強いホーミングを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理活性脂質受容体BLT1に対する抗体を用いて樹状細胞サブセットを解析し、BLT1の発現量の違いで区別される2つのサブセットがT細胞を分化させる能力(特にTh1細胞への分化)、T細胞を増殖させる能力、また、CCR7リガンドであるケモカインCCL21に対する走化性およびリンパ節への走化性において大きく異なることを見出し、順調に解析を行っている。両樹状細胞サブセット群のマイクロアレイ解析から、BLT1hi樹状細胞はTLR9刺激によりIL-12p70を産生し、BLT1lo樹状細胞はIL-2を産生することがわかった。これらのsame input, different outputの違いが両サブセット間の細胞内シグナル伝達機構の違いにあることを見出し、詳細な検討を行っている。 さらに、研究開始時に想定していた研究に加えて、樹状細胞に発現する分子とBLT1の相互作用に興味を持ち、いくつかの分子を対象にBLT1との相互作用を検討した。その結果、RAGEと呼ばれる細胞膜1回貫通型のタンパク質がBLT1と相互作用することを見出した。さらにBLT1とRAGEの相互作用の解析を進めた結果、RAGEがBLT1依存的なサイトカイン産生を抑制し、走化性に影響することを明らかにした。これらはオリジナリティの高い予想を超えた発見であり、今後の発展が大いに期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
TLR9はどの細胞内コンパートメントにいるか(endosome or endolysosome)によって下流のシグナル伝達経路をスイッチすることが知られているため、今後はLTB4-BLT1経路がTLR9の細胞内局在に与える影響を解析する予定である。両樹状細胞サブセット間のサイトカイン産生能の違いが、T細胞分化、T細胞増殖に与える影響を、中和抗体を用いて検討する。また、BLT1hi樹状細胞とBLT1lo樹状細胞のT細胞分化誘導、T細胞増殖誘導、リンパ節への走化性における役割の違いが、Th1応答を制御するのに重要だと考え、in vivo移入実験を行う予定である。 また、BLT1とRAGEの相互作用の解析において、RAGE遺伝子欠損マウスを用いて好中球のLTB4に対する走化性を解析したところ、WTに比べRAGE KOマウスの好中球では遊走速度が減弱した一方で、directionalityは増強した。さらに、RAGEの阻害タンパクであるsoluble RAGEを添加すると、同様の傾向が認められた。今後は、in vivoにて解析を行い、RAGEの好中球におけるLTB4に対する好中球遊走能に対する役割を解明していきたい。同時に、RAGEがLTB4-BLT1相互作用に及ぼす影響やBLT1とGタンパク質との相互作用に与える影響も生化学的手法を用いて検討して行く予定である。また、好中球は細胞内に大量のRAGEリガンドを含有することが知られているが、その放出の機構は不明である。今後は、LTB4-BLT1が好中球におけるRAGEリガンド放出にどのように影響するかについても検討して行きたい。
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Research Products
(5 results)