2013 Fiscal Year Annual Research Report
スパコン向け高速・高精度な部分特異値分解ソルバの開発と公開
Project/Area Number |
13J02820
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石上 裕之 京都大学, 大学院情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 特異値分解 / 数値計算 / 逆反復法 / 再直交化付きブロック逆反復法 / 行列乗算 / マルチコア / GPU |
Research Abstract |
本研究の目的は、大粒度の並列化を可能とする高速・高精度な部分特異値分解アルゴリズムを開発し、応用することである。一年目にあたる平成25年度は、当初の予定通り、設計した部分特異値分解アルゴリズムの内、特異ベクトル計算アルゴリズムの共有メモリマルチコアCPU環境およびGPU環境における高速化を目標とした研究を行った。 従来の特異ベクトル計算アルゴリズムでは、小粒度の並列化しか実現できなかったことから、本研究では、大粒度の並列化が可能な、行列乗算を用いることのできるアルゴリズム「再直交化付きブロック逆反復法」を新たに設計した。この新規のアルゴリズムは、従来法の再直交化付き逆反復法や同時逆反復法を基としたもので、その性質から収束証明を与えることができ、数学的にも裏付けられたアルゴリズムである。性能評価においては、共有メモリマルチコアプロセッサ環境における実験を行った。その結果、提案した特異ベクトル計算アルゴリズムが、従来アルゴリズムと同程度の精度を保ちながら高速な計算を実現し、高いスケーラビリティをもっことを示した。これにより、大粒度の並列化を可能とするアルゴリズムの設計という当初の目的を果たすことができた。また、提案アルゴリズム特有の性質として、ブロックパラメータの選択による速度性能の変化がある。この性質についても、実験を通した性能評価を経て、実用に耐えうる知見を得られている。以上の結果は、査読付き国内会議に投稿・採録され、当該会議において成果発表している。また、特異ベクトル計算アルゴリズムのGPU向け実装コードの開発にも成功し、成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目に予定していた、大粒度の並列化を可能とする特異ベクトル計算アルゴリズムの再設計という当初の目標を達成した。これにより、次年度以降の研究を進めていくための土台を構築することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度設計した特異ベクトル計算アルゴリズムは、既に従来のアルゴリズムよりも高速であることが示されている。その一方で、異なるアルゴリズムとの融合や新たな並列化手法を取り入れることで、更なる高速化が望めることが発見された。このため、次年度においても、特異ベクトル計算アルゴリズムの高速化に引き続き行いたいと考えている。以上に加え、当初予定していた、目標とする部分特異値分解アルゴリズムの分散メモリ環境向け実装コードの開発および性能評価にも着手したいと考えている。
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Research Products
(10 results)