2013 Fiscal Year Annual Research Report
完全WKB解析によるパンルヴェ方程式の2点変わり点問題の研究
| Project/Area Number |
13J02831
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
岩木 耕平 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC2)
|
|---|
| Keywords | 完全WKB解析 / パンルヴェ方程式 / 変わり点 / Stokes segment / パラメトリック Stokes現象 / WKB解析的変換論 / クラスター代数 |
|---|
| Research Abstract |
研究題目にある「パンルヴェ方程式の2点変わり点問題」の研究に取り組み、以下の結果を得た :
① Stokes segnent上におけるパンルヴェ函数のWKB解析的変換論の構築.
② 完全WKB解析とクラスター代数の関係の発見(名古屋大学の中西知樹准教授との共同研究).
まず①について説明する. Stokes segmentとは2つの変わり点を結ぶStokes曲線のことであり, 研究題目の「2点変わり点問題」を論じる上で最も基本的な考察対象である. 特に, Stokes segrnentに関連して微分方程式の解に起こる「パラメトリックStokes現象」の解析は本研究の目的であった. ①の主結果は, 「全てのパンルヴェ方程式は, Stokes segment上である変数変換により第II型のパンルヴェ方程式に変換される」ことを示したことである. この意味で標準形である第II型のパンルヴェ方程式の2点変わり点問題やパラメトリックStokes現象は, 既に私の修士論文で研究されている. 従って, ①の結果は「Stokessegmentに関連してパンルヴェ方程式の解に起こるパラメトリックStokes現象は, 私の修士論文の結果を用いて記述できる」ということを示唆している. この結果は論文にまとめ, 学術雑誌に投稿中である.
次に②について述べる. クラスター代数の専門家である中西知樹氏と協力し, 2階線形上微分方程式の完全WKB解析の理論とクラスター代数の理論を結びつけることに成功した. これは申請書には記載しなかった内容だが, 研究題目と密接に関わるので取り組んだ. 実際, 2点変わり点問題において重要な上述のStokes segmentやパラメトリックStokes現象が完全WKB解析とクラスター代数を結びつける上で本質的な役割を果たしている. クラスター代数は解析学とは-見無縁な研究対象であったので, 今回の発見は今後様々な応用を生むと期待される. この結果は論文としてまとめ, 学術雑誌に投稿中である.
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は「WKB解析的変換論」の構築が目標であり, それは達成されている. ただし, ある種類のStokes segmentに関わるパラメトリックStokes現象の解析が手付かずのまま残ってしまった. またStokesグラフの性質についても期待していたような深い理解は得られなかった. 一方で, クラスター代数との関係のような, 申請の段階では全く予想していなかったいくつかの副産物も結果として得ることができた.
|
| Strategy for Future Research Activity |
最終目標のパラメトリックStokes現象を記述する公式の厳密な導出に向けて研究を進める. 問題点は, 昨年得られた変換論が, 具体的にどの解たちを結びつけるか? という部分の理解が甘いことである. この問題について, 昨年の研究の中でいくつかの予想が得られているので, 多くの例を計算して問題を解決したい. また, 上述の「ある種類のStokes segmentに関わるパラメトリックStokes現象の研究」も進める. 標準形となるタイプのパンルヴェ方程式の見当はついており, その標準形への変換論は昨年の結果と同様に得られるであろう.
また, パンルヴェ方程式の楕円漸近解と完全WKB解析における2-パラメータ解の関係を探る、この問題において, 最近Lisovyy氏らが研究している「パンルヴェ方程式のタウ函数の展開の明示的な公式」の理解が重要であると考えている. Lisovyy氏も私のクラスター代数の結果に興味を持っているようなので, 今後は積極的に研究打ち合わせを行いたい.
|
Research Products
(10 results)
