2014 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ農村における多民族の共生-混住する民族間にみられる生業の違いと相互扶助
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13J02843
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原 将也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ザンビア / 多民族農村 / 移住 / キャッサバ / 端境期 / 友人関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度の調査結果をふまえ、平成26年5月に日本アフリカ学会において食料確保からみた多民族農村における社会関係についてポスター発表をした。平成26年9月から平成27年3月にかけては、ザンビアにおいて現地調査を実施した。 現地調査では、調査村の人びとのライフヒストリーの聞き取りや日常生活における相互行為の参与観察、ザンビア国立公文書館における文献収集を実施した。多民族農村である調査村には、古くから居住しているカオンデの人びとのほかに、他地域からきたカオンデ以外の移住者が多く暮らしている。移住者のなかには、民族や親族関係ではなく友人関係をたより移住した人や、知りあいがおらず直接村長と交渉して移住した人もいる。移住してきた人びとの多くは、移住した直後に日常生活でたよることができる社会関係を、近隣の人びととのあいだで積極的に構築していた。 カオンデの人びとは、おもにモロコシやトウモロコシを栽培している。一方でカオンデ以外の人びとは、キャッサバを積極的に栽培している。モロコシやトウモロコシを栽培しているカオンデの人びとは、端境期を迎えると近隣のカオンデ以外の友人や知人からキャッサバを入手することで、食料不足を回避している。しかしケンカや事故といったもめごとが起こった際には、みずからの親族を味方につけることで人数を増やし、相手と争うこともある。 調査村には多様な背景を持つ人びとが共住しており、人びとはそのなかで多くの近隣の人びとと築いた人間関係をたよることで生活している。その社会関係は、アフリカ農村研究において従来から指摘されてきた民族や親族のみならず、友人や同僚、隣人、教会の仲間などと多岐にわたっている。人びとは困難な状況に陥るとみずからが保持する多様な人脈のなかから、そのときの本人や相手の状況に応じてたよる人物を選択し、生活を安定させている可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、9月から3月にかけて約7ヶ月間の現地調査を実施できた。現地調査では、調査村の人びとに詳細なライフヒストリーを聞き取ることができ、調査村が拡大してきた経緯や多民族農村となった要因について新たな知見を得ることができた。 また長期にわたって人びとの生活を参与観察することで、これまでの短期間の調査ではわかっていなかった人びとの日常生活における社会関係について明らかにすることができた。そのため現段階では、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の成果をふまえ、平成27年度には多民族農村の形成要因と人びとの移住史、多民族農村に暮らす人びとの日常生活における社会関係の構築・維持に関する成果をまとめ、発表しようと考えている。また調査村で生じている多民族の混住について、文献調査で明らかになったザンビア社会経済史とあわせて検討することで、マクロな視点から調査村で生じている事象について考察し、アフリカ農村における多民族の共生について解明していく。
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