2013 Fiscal Year Annual Research Report
アルドラーゼAを介した異常型プリオン蛋白侵入機構の解明と牛海綿状脳症予防への応用
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13J02872
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長澤 裕哉 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プリオン / アルドラーゼA / M細胞 |
Research Abstract |
牛海綿状脳症はウシのプリオン病であり、日本及び世界の畜産業の関連産業に大きな打撃を与えた。そのため、牛海綿状脳症の全容解明が望まれている。近年、牛海綿状脳症の感染は、腸管M細胞が異常型プリオンを取り込んで輸送小胞として基底側へトランスサイトーシスを行うことが報告され、M細胞を介して行われることが明らかとなった。しかし、ウシ腸管上皮M細胞におけるプリオン蛋白質取り込みに関わる詳細な研究は行われていない。申請者はプリオン蛋白質取り込みに深く関わる蛋白質としてアルドラーゼAを同定し、アルドラーゼAがプリオン蛋白質と親和性を持ち、異常型プリオン蛋白質取り込み部位で強く発現していることを明らかにしてきた。本研究では、アルドラーゼAに焦点を当て、アルドラーゼAが異常型プリオン蛋白質の感染に関与する蛋白質であることを解明する。本年度は、研究計画に従い遂行し、以下の知見が得られた。 アルドラーゼAは、M細胞表面、輸送小胞中、神経線維芽細胞株およびマウスの中枢神経中においても強く発現していることが免疫染色の結果明らかとなった。 また、当研究室で樹立したM細胞に分化誘導能を持つマウスおよびウシ腸管上皮細胞をトランズウェルに播種してM細胞に分化誘導させた後にBIE細胞を抗アルドラーゼA抗体で処理し、異常型プリオン蛋白質を添加した。培養9時間後に下部培地を回収し、プロテアーゼK処理後にウェスタンブロット解析を行い、異常型プリオン蛋白質を検出した。その結果、下部培地中の異常型プリオン蛋白質が抗体処理により抑制された。以上より、M細胞表面に存在するアルドラーゼAを抗体で処理することにより、M細胞における異常型プリオン蛋白質取り込みが抑制されることが判明した。 また、人工DNAヌクレアーゼTALENを用いてアルドラーゼAノックアウト細胞を作製し、今後のM細胞の異常型プリオン蛋白質のトランスサイトーシスにおけるアルドラーゼAの関与実験の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の年次計画は滞りなく実施され、M細胞表面、輸送小胞中および異常型プリオン蛋白質蓄積部位である中枢神経にアルドラーゼAが強く発現していることが分かった。また、M細胞表面に存在するアルドラーゼAを抗体で処理することにより、M細胞における異常型プリオン蛋白質取り込みが抑制されることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、作製したアルドラーゼAノックアウトマウス腸管上皮細胞を用いて、M細胞の異常型プリオン蛋白質のトランスサイトーシスにおけるアルドラーゼAの関与実験を行い、アルドラーゼAが異常型プリオン蛋白質の感染に関与する蛋白質であることを解明する。また、マウスへ異常型プリオン蛋白質を経口感染させ影響を解析する。異常型プリオン蛋白質とアルドラーゼA抗体を経口投与し、異常型プリオン蛋白質侵入部位(小腸パイエル板、鼻咽頭上皮)、蓄積部位(脳、神経節)におけるアルドラーゼAと異常型プリオン蛋白質の発現、プリオン病発症と致死までの時期を正常感染マウスと比較し、詳細に検討する。
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Research Products
(4 results)