2013 Fiscal Year Annual Research Report
合意形成場面における信頼 : 機能および規定因に関する実証的研究
Project/Area Number |
13J02905
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 浩輔 北海道大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 信頼 / 公共的意思決定 / 合意形成 / プリンシパル=エージェント問題 / 制度信頼 / 議題設定効果 / リスクコミュニケーション / 社会心理学 |
Research Abstract |
本研究は、合意形成問題における信頼を巡る諸問題群についてプリンシパル=エージェント関係の分析などの切り口から、調査及び実験を用いた検討を行うものである。今年度は、1. 当事者性や利害の方向性が信頼に及ぼす影響について検討したシナリオ実験が査読付学術誌に刊行された、2. 風力発電を巡り対立が生じた係争事例の調査を行い、その分析結果を国際学会で報告した、3. 信頼をはじめとした評価を歪める要因としてフレーミング効果をとらえ、議題設定の枠組みを操作した実験を実施し、その結果を国内学会で報告した、4. プリンシパル=エージェント問題を考える上で整理すべき制度信頼を巡る文献を精査し、その概念整理を試み、さらに、試験的な質問紙調査を計画した。1では公共事業の決定主体に対する信頼を対象とし、評価者の社会的立場を操作し、信頼を説明する既存のモデルを比較検討するシナリオ実験を行なった。その結果、利害関係といった現実の社会構造的要因が信頼を阻害すること、公共的価値などを通じた利害を乗り越えた信頼構築の可能性が明らかになった。2では現実の係争事例を扱い、事例全体や事例に係わる論点や主体(推進・反対・評価に係わる行政)を人々がどのように評価するのかについて調査を行った。その結果、信頼の低さが社会的受容を阻害する一方、低信頼状況下であっても公正な手続きによって社会的受容が得られる可能性が示された。3では社会的に論争を呼ぶ問題に対し、その評価する枠組み(議題設定)の持つ影響を検討するため、実験を行なった。その結果、問題が「係争」という枠組みで提示された場合、論点の重要性や内容を熟考せずに賛否の判断を行ないがちであることが示された。4では組織や社会制度に対する信頼の性質について明らかにするために予備実験を行なった。得られたデータについては現在解析中であり、結果をもとにさらに精緻化した実験を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
利害や価値が対立すれば行政などの主体への信頼が低くなるという、一見自明視されがちな問題を、私的価値と公共的価値に分離し公共的価値に着目できれば主体への信頼につながり、利害を超えた合意形成が可能になるという点を示した研究が査読付学術論文に掲載され、現場の問題にもその適用可能性を示した事例調査を国際学会で報告した。さらに、本年度には実験研究を前倒しで行なった。フレーミング(議題設定)効果に関する実験を行い成果を得ており、文献研究から明らかになった検討課題(制度信頼)についても予備的研究を開始した。以上を総合的にみて、全体の進行状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
国際学会にて報告した研究を査読付英文誌へ投稿する。予備実験から、公共的意思決定場面でエージェントとなる主体への信頼を扱うときに、組織への信頼とその組織内の一個人への信頼との関係に大きなゆらぎがあることが見出されつつある。すなわち、否定的な事象の場合には組織内個人への信頼と組織への信頼が密接に関連するのに対し、肯定的事象ではその関連が強くないという結果が判明しつつある。この点についてさらに解析を進めると同時に、この結果の持つ含意を検討しながら本実験を計画する。調査研究に関しては、今後は事例の収集及び予備調査を進め、対象とする事例を絞り込んでいき、調査を実施する予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] Procedural fairness and social acceptance of the Deliberatitve Poll on future energy and environmental policy2013
Author(s)
Maeda, H., Hirose, Y. Ohnuma, S., Sato, K., Nonami, H., Sugiura, J. & Ohtomo, S.
Organizer
10th Biennial Conference on Environmental Psychology
Place of Presentation
Magdeburg, Germany
Year and Date
2013-09-23
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