2013 Fiscal Year Annual Research Report
構造列挙と最適化に基づく化合物と代謝ネットワークの解析法
Project/Area Number |
13J02920
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
趙 楊 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 木状化合物の列挙 / 幅優先探索順 / 探索空間 / FBID / 代謝ネットワークの頑健性 / 線形計画法 / 遺伝子ノックアウト |
Research Abstract |
本研は計画の通り、平25年度に(1)「幅優先探索順に基づく木状化合物の列挙」及び(2)規模代謝ネットワークの頑健性のモデル化」を実現するために、効率の良い新たな解析手法の提案・実装・計算機実験・論文化を行った。それと共に本研究者は博士論文を作成し、情報学の博士号を取得した。 (1)に関しては、新規薬剤の発見や設計等を目的として、条件を満たす化合物(例えば、一定の原子数を持つ化合物や、実際にある部分構造を持つ化合物等)を列挙する問題を木状化合物に対して考えた。本研究は従来の深さ優先探索順の列挙手法と異なり、幅優先探索順に基づき効率良く重複を回避する列挙アルゴリズムを提案した。更に探索空間を削減するために、三つの重要な概念(center-rooted、1eft-heavy、正規形)を導入した。計算機実験により既存手法との比較を行い、提案した列挙法の正確性及び高速性を検証した。 (2)に関しては、代謝流束均衡解析に基づき、Flux Balance Impact Degree (FBID)と呼ばれる代謝ネットワークの頑健性解析における新指標を提案した。新たな利点として、FBIDは大規模代謝ネットワークに対して有効であり、可逆反応も適切に取り扱う。更に提案した新指標の計算手法として、線形計画法を用いる方法を開発した。計算機実験を通して、実際の代謝ネットワークデータを用いて遺伝子ノックアウトによるFBIDを計算し、各遺伝子の重要度の予測を行った。更に大腸菌の代謝ネットワークデータ及び遺伝子ノックアウト実験結果のデータを用いて既存指標との比較を行い、FBIDは遺伝子の重要度を精度良く予測することを示し、本指標の有効性を確認している。 以上の(1)と(2)の研究成果をまとめて論文を作成し、それぞれがJBCB誌及びBioinformatics誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績に報告されている通り、本研究では化学構造の数え上げ、および、代謝ネットワークの頑健性解析のそれぞれについて研究成果を得ることができた。既存手法との比較により、期待通りの成果が得られたと判断できる。また、これらの成果をまとめた論文も国際論文誌より出版された。更に、現在までの研究成果をまとめて博士論文を完成し、博士号も順調に取得した。以上のことにより、当初の計画のように進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は研究計画の通り、平成25年度に化学構造の数え上げ、及び、代謝ネットワークの頑健性解析について、効率よく新たな解析手法の提案・実装・計算機実験・論文の発表を実現した。提案した木状化合物の列挙法を拡張し、研究室メンバーと共同研究を行い、より複雑で一般的な化合物の列挙に対する効率の良いアルゴリズムを開発中である。また本研究で提案した代謝ネットワークの頑健性の解析における新指標(FBID)を改良し、様々な代謝ネットワーク上で実験を行い、実用性の高い新指標を開発する予定である。平成26年度は最終年度のため、それぞれ現在の化学構造の数え上げ手法の拡張、及び、FBIDの改良を実現し、まとめた論文を投稿する予定である。
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Research Products
(7 results)