2013 Fiscal Year Annual Research Report
ホスト-病原体間の相互作用におけるエピジェネティックなゲノム状態間のせめぎ合い
Project/Area Number |
13J02925
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
福世 真樹 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宿主・病原体共生系 / エピジェネティックス / 制限修飾系 |
Research Abstract |
感染について最もよく研究された細菌とファージの共進化実験で、軍拡競争がDNA配列レベルのジェネティックな変化の蓄積によることが, 最近の実験で知られている. しかし, この様な相互作用の進化にエピゲノムの変遷がどのように関わるかについては, ほとんど報告が無い. そこで本研究では, 「利己的なエピジェネティックな系の間のせめぎ合いが, ホスト・病原体の共存を促進する」可能性を検証するための実験系の構築, および小規模でのシミュレーションを用いた解析を行う. 本研究は, エピジェネティックなシステム間のせめぎ合いによる、ゲノムのメチル化状態の変化が、ホストパラサイトの共存・共進化に重要な役割を果たしていることを示すパラダイムとなる, その成果は, エピジェネティックス, 感染を初めとする生物間相互作用, そして, ゲノム内せめぎ合いの研究に, 大きなインパクトを与えることが予想される. 大腸菌・ファージのモデル感染系において問題となるファージ対抗性大腸菌の出現はファージ受容体遺伝子lamB及びその制御遺伝子への変異の導入によることが知られている. そこで今年度の研究では, 野性株大腸菌MG1655にlamB遺伝子をもう1コピー組み込んだ変異体(ファージ耐性菌が出現しにくい)を作成し, これに2種類のエピジェネティック系をそれぞれ導入した. また, この大腸菌株を用いて予備実験を行い, 求めたパラメータを用いてシミュレーションを行い, 2種類のエピジェネティック系によって大腸菌・ファージの共存が特に空間構造のあるときに維持されやすいことを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「なぜホスト・病原体が共存し続けるのか」という生物間相互作用の問題に取り組み, 細菌とその病原体をモデルとする, 実験とシミュレーションを連結した解析系を構築した. また, 「なぜ病原体は強毒性を示すのか」という疑問の解明にも数理解析的手法を用いて取り組み, 一定の条件下で毒性に進化的不安定性を生じることを示し, この結果について学会発表を行った. さらに, 新しい制限酵素の機能解析も非常に精力的に取り組み, 新しい制限酵素グループを提唱した. この結果について現在, トップジャーナルに論文を投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、構築した実験系を用いて継代感染実験を行う. 実験条件を振って, 振動の持続の程度を見る. 更に, 実験とシミュレーションの定量的一致を目指すために, モデルの改良を行う. 実験によって, 変異, エビ変異の寄与が判明した段階で, それらもモデルに取り込む. また, 必要であればMPIを用いて大規模な並列計算できるようにプログラムを書き換え, 2~4桁大きなポピュレーションサイズを用いる. (東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピューターシステムを使用する)
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