2013 Fiscal Year Annual Research Report
かさ高い置換基により安定化された含アルミニウムクラスターの精密合成と物性解明
Project/Area Number |
13J02926
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長田 浩一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機元素化学 / 有機金属化学 / アルミニウム / ジアルメン / アルミレン / クラスター |
Research Abstract |
高周期典型元素を含む多重結合は極めて反応性が高く合成・単離は不可能であるとされてきたが、かさ高い置換萎による立体保護を活用することで、様々な高周期典型元素間の多重結合化合物が安定に合成され、興味深い構造や反応性が報告されている。しかしながら、高周期アルミニウム間二重結合化学種ジアルメン(RA1=AIR)は安定な化合物の報告例が未だに無く、典型元素化学におけるチャレンジングな標的である。またジアルメンや、その解離で生じると考えられるアルミレン(RA1)は、アルミニウムクラスターの基本単位と捉えられるため、クラスターのボトムアップ合成及び物性解明において重要な化学種である。本研究では、かさ高い置換基を活用することで安定ジアルメンの合成を行うとともに、ジアルメンを出発原料としたボトムアップ的なアルミニウムクラスターの精密合成を検討する。さらに、他の典型元素や遷移金属元素とジアルメンとの反応による混合型クラスターの合成を行い、得られた含アルミニウムクラスターの構造や物性を解明する。本年度の研究では、以前に報告したかさ高い置換基Rを持っ1,2-ジブロモジアルマン(R(Br)AIA1(Br)R)をベンゼン中で還元することにより、ジアルメンとベンゼンの[2+4]環化付加体を合成し、その結晶中および溶液中での構造を明らかにした。さらに、ジアルメン-ベンゼン付加体とナフタレンやアルキンといった不飽和炭化水素化合物との反応により、対応するジアルメンの捕捉体が得られたことから、ジアルメン-ベンゼン付加体がジアルメン等価体としての反応性を有することを見出した。また、ジアルメン-ベンゼン付加体と白金0価錯体との反応により、初めての2配位アルミレン白金錯体の合成に成功し、この錯体がアルミニウム-白金間に多重結合を持つことを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果に関しては、既に報告している1,2-ジブロモジアルマンをベンゼン中で還元することにより、ジアルメンとベンゼンの[2+4]環化付加体の合成に成功した。さらに、ジアルメン-ベンゼン付加体と様々な捕捉剤との反応により、対応するジアルメンの捕捉体が得られたことから、ジアルメン-ベンゼン付加体はジアルメン等価体としての反応性を有することを見出した。また、ジアルメン-ベンゼン付加体と白金0価錯体との反応により、初めての2配位アルミレン白金錯体の合成に成功した。これらの成果は、有機アルミニウム化合物の新しい性質を明らかにしたものであり、国内外で非常に注目されている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、第一の目的化合物としていたジアルメン(RA1=AIR)の単離・直接観測には至っていないが、ジアルメン-ベンゼン付加体をジアルメンの合成等価体として活用することで、三核以上の高次アルミニウムクラスターの合成検討が可能であると考えている。また、低原子価状態のケイ素、ゲルマニウム、リンといった他の高周期典型元素化合物との反応によって、元素混合型クラスターの合成についても検討を行う。さらに、ジアルメン-ベンゼン付加体から反応中間体として発生していると考えられるジアルメンまたはアルミレンを捕捉するために、ルイス塩基や金属錯体を用いた捕捉実験を行う。
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Research Products
(6 results)