2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒-基質間における不斉反応場に働く分子間力の解明:気相分光からのアプローチ
Project/Area Number |
13J02937
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池田 貴将 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超音速ジェット法 / 光イオン化法 / 気相赤外分光 / 溶媒和クラスター / 溶媒和構造の組み換え |
Outline of Annual Research Achievements |
常温程度の反応場において、有機触媒-基質複合体の立体構造は、その柔軟性から分子間力の及ぶ範囲で動的に変化することが予想される。昨年は、より単純な複合系であるベンジルアルコール(BA)水和クラスターを対象に、複合体の構造揺らぎを実験的に観測した。しかし、昨年の研究では、光イオン化後のBA水和クラスターが持つ内部エネルギー分布の都合上、構造ゆらぎのエネルギー依存性など、ダイナミクスに影響するパラメーターを定量的に評価することが困難であった。そこで今年度は、イオン状態で異なった内部エネルギー分布を持つ5-ヒドロキシインドール(5HI)水和クラスターならびに5HIメタノールクラスターに対し気相分光を適用することで、ダイナミクスを引き起こすエネルギーを定量的に評価することを目標に研究を行った。 5HI水和クラスターおよびメタノールクラスターは、5HI中のOH基もしくはNH基に溶媒分子が結合した2種類の異性体(OH異性体、NH異性体)を持つ。それぞれの異性体で、光イオン化後の構造ダイナミクスを調査したところ、5HI水和クラスターおよびメタノールクラスター共に、OH異性体経由では構造変化を示さないのに対し、NH異性体経由では両異性体間で溶媒和構造の組み換えを起こすことが明らかとなった。 また、溶媒和構造の組み換えを示した5HI水和クラスターの内部エネルギーを調査するため、光イオン化効率を測定したところ、イオン化しきい値が鋭く立ち上がる結果を得た。これは、組み換えを起こす5HI水和クラスターの内部エネルギーが、これまでダイナミクスを起こす系で報告されてきた内部エネルギーよりも著しく低く、加えて、組み換えを起こすエネルギーしきい値を実験的に決定できる可能性を示している。来年度は、このエネルギーしきい値を実験的に求め、ダイナミクスとエネルギーの相関について調査を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
内部エネルギーと異性化障壁を調査するため、測定対象を昨年までとは異なるクラスターに変更したが、異性体選別の過程で実験が難航し、当初の計画から遅れる結果となった。しかし現在では、異性体選別ならびに光イオン化後における構造ダイナミクスの観測に成功している。今年度採用したクラスターでは、当初の狙い通り、構造ダイナミクスを起こす内部エネルギー分布が低い領域にあることが光イオン化効率測定から示されたため、現在、異性化障壁を定量的に決定することを目標に実験を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在の実験を継続して、構造ダイナミクスにおける内部エネルギーと異性化障壁との相関を、2波長共鳴多光子イオン化法を利用した赤外分光によって定量的に評価する予定である.また、観測された組み換え反応のエネルギーしきい値について、5-ヒドロキシインドールに配位する溶媒分子の疎水性を変化させることで系統的に調査し、溶媒分子とダイナミクスの相関まで含めて明らかにしていきたい。
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Research Products
(4 results)