2013 Fiscal Year Annual Research Report
走査型X線回折トモグラフィーによる3次元ナノメートル空間分解バイオイメージング
Project/Area Number |
13J02959
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 明大 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | X線顕微鏡 / タイコグラフィー / コヒーレントX線光学 / バイオイメージング |
Research Abstract |
走査型コヒーレントX線回折イメージング(通称 : X線タイコグラフィー)は、マイクロスケールからナノスケールまでの試料空間構造を非破壊で観察できるX線イメージング技術である。その特長を生かし、生体試料などの弱位相物体の観察や、トモグラフィーと組み合わせた3次元的な試料観察が期待されている。本年度は、以下の2点を中心に研究を進め、成果を得た。 (1)磁性細菌のX線タイコグラフィー観察 磁性細菌などの生体試料は、主に軽元素で構成されるために散乱能が低く、X線を利用したナノメートル空間分解観察の難度は高い。本研究では、高感度X線タイコグラフィー装置を開発することで、走査型電子顕微鏡では観察できなかった磁性細菌内部の細胞小器官(マグネトソーム)を観察することに成功した。 (2)厚い試料の高分解能X線タイコグラフィー観察 X線タイコグラフィーにおいて達成可能な分解能は、取得する回折パターンの最大散乱角だけでなく、試料の厚さによっても制限される。これは、生体試料の高分解能観察を目指すにあたって障壁となる。我々は、この問題を解決するため、試料を薄い層の重なりとみなすマルチスライスアプローチを位相回復計算に導入した。回折パターンの取得実験は、大型放射光施設SPring-8のBL29XULで行った。試料には、ミクロ微粒子を利用して厚さを制御した2層構造体を用いた。実験で取得した回折パターンデータに、マルチスライスアプローチを取り入れた位相回復計算を実行したところ、厚さによる分解能の制限を超えて50nmの面内分解能を達成した。さらに、光軸方向にも105μmの分解能で試料を解像でき、1方向からのX線照射のみから3次元的な試料像を再構成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって、X線タイコグラフィーが生体試料の内部構造観察に有効であることが実証されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、開発した高分解能X線タイコグラフィー装置によるバイオナノイメージングの有効性が示された。今後、研究計画に示したように、生体試料の3次元ナノ空間分解能観察に向けて研究を進める。具体的には、トモグラフィーへ拡張するための実験装置開発、ならびに、3次元再構成を行うためのアルゴリズム開発を行う。
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Research Products
(4 results)