2013 Fiscal Year Annual Research Report
企業系列の解体による役員派遣の解消と経営指向性の変化
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13J02967
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡辺 周 一橋大学, 大学院商学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 経営学 / 経営戦略 / 経営組織 / コーポレートガバナンス / 上位階層視座 / 役員 / エスカレーション / 企業系列 |
Research Abstract |
平成25年度は, (1) 企業の役員構成が経営指向性に与える影響について既存研究はどのように議論してきたのかを整理し, 作業仮説の導出を進める文献サーベイ作業と, (2) 本研究の分析に必要な, 戦後日本のトップ・マネジメントのプロフィールについてのデータの収集・整理作業, さらに(3)定量分析を平成26年度以降行う上で克服すべき課題を予め明らかにするためのパイロットスタディの3つを行った. 既存研究の文献サーベイでは, 企業の役員構成が企業の意思決定に与える影響を検討している. 書籍と論文を対象に文献研究を行った. その結果, 日本企業を対象に行われた研究の数が極めて少ないことを確認した. また, 欧米の既存研究は, デモグラフィックな要大に注目して役員構成の影響を分析する文献と, パーソナリティに注目してその影響を分析する文献のいずれかに分類できることを指摘し, 各文献をそれぞれに整理した. この文献レビューの成果については組織学会にて発表している. さらに, 文献レビューから導き出された具体的な研究課題について, パイロットスタディを実施した. 既存のガバナンス研究では, 企業経営のチェック機能を高めるために, 役員構成として社外役員は多いほど望ましいと示唆されている. しかしこのパイロットスタディでは, コミットメント・エスカレーションの研究を応用し, 社外役員の数が多いほど, むしろ経営者による問題の認識・解決は遅れる可能性があることを議論し, 先に述べたデータベースを用いてこれを実証している. この成果については, 海外のワークショップと, ファイナンスや会計学など異分野の研究者も集まるワークショップの2つで発表をした. 以上のように, 当初の予定通り, 本研究課題遂行に必要な文献レビューとデータセットの構築を行いながら, 国内外の幅広い関係分野の研究者の前で暫定的な研究知見を公表したというのが平成25年度の研究活動である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と比較すると, 企業の役員構成が経営指向性に与える影響に関連した数多くの既存研究が確認されたため, 文献レビューに時間がかかったものの, データセットの構築では, 既存のデータベースが利用可能になったことで時間を短縮することができ, パイロットスタディまで実施することが出来た. 現在のところ, 当初の計画に含まれていた内容を完了することが出来ており, 平成26年度分の国際学会発表も採択されている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においても継続的に理論と実証の両面において研究を推進するが, 最終年度であることから研究成果を公表することに力点を置き, 専門査読誌へ向けた論文の執筆と投稿を進める. 具体的には, 当初の計画通り, 投稿準備中となっている文献レビューを推敲する作業を加速させると共に, パイロットスタディの知見を投稿へ向けて精緻に検討し直す. そのためにはデータセットを拡張すると共に, 評価者間信頼性を高める必要があり, 必要に応じて研究補助員を雇うことを検討する. また, 世界に向けて成果を発信するために, 海外学会などで研究者たちと議論を深めていく.
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Research Products
(3 results)