2013 Fiscal Year Annual Research Report
60~110億年前の宇宙における銀河の形成・進化の環境依存性に関する研究
Project/Area Number |
13J02968
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
馬渡 健 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 銀河天文学 / 初期宇宙 |
Research Abstract |
今年度、私は「赤方偏移5以上の遠方宇宙における成熟した大質量銀河の探査」を行った。赤方偏移5とは宇宙年齢10億年程度に相当し、宇宙年齢137億年の中では初期段階に対応する。近年、観測技術の向上から星形成が非常に活発な銀河が初期宇宙において見つかり始めており、そうした銀河の成長しきった姿として星形成を終えた成熟した銀河が赤方偏移5において存在してもおかしくない。そのような銀河は数としては少ないと予想されるが、それよりも更に以前の初期宇宙における銀河形成の仕方に強い制限を与える貴重なサンプルになると考えられる。 私の研究では、ハーバード天文台(アメリカ)の共同研究グループが取得したSpitzer衛星の最新データを主軸とした赤外線データを用いて、赤方偏移5の成熟した銀河の候補を38天体同定した。その際に、銀河進化理論モデルから独自に考案した選択条件を適用した。選び出された銀河に対してあらゆる波長域のデータを用いた詳細なスペクトル解析(測光スペクトル)を行い、少なくとも1天体について赤方偏移8の成熟銀河である可能性が高いという結果を得た。しかしながら、ほとんどの天体に対しては、詳細な測光スペクトル解析の段階で赤方偏移が異なる別種族銀河である可能性が除ききれなかったため、初期宇宙の成熟銀河である確証は得られなかった。この原因は主に近赤外域と中間赤外域のデータの深さが十分でない事に起因しているが、現在の観測技術のほぼ限界であると言ってよい。 本研究は、過去の数少ない先行研究に比べて数多くの候補天体サンプルを作り、それらの性質についての可能性をより網羅的に議論したという点で、一定の成果を出せたものと考える。この研究結果については国内外の研究会において発表し、投稿論文(Astrophysical Journal)にまとめている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書の記載通り、赤方偏移5以上の成熟銀河の探査を行ったが、非常に挑戦的なプロジェクトであるため、解析結果の解釈や考察について共同研究者との意見の統一に当初の予定より時間を要している。25年度の大半を米国に滞在したが、米国での共同研究者のうち重要人物の1人の所属が変わった事も影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
赤方偏移5以上の銀河については候補天体の同定が済んだので、それらのクラスタリングを調べる。一方で現状の観測技術では解析結果に対する信頼度が予想以上に低いので、将来装置による観測のためのフィードバックを得る程度を赤方偏移5以上の銀河に対する研究の目的とする。そして低赤方偏移に議論をシフトする。具体的にはこれまでに我々のグループで研究が進んでいる赤方偏移3.1と2.4の銀河団領域に加えて、新たに赤方偏移1.6の銀河団探査を行う事で、環境・時間の両側面から銀河進化を考察するという本研究の最終目標に帰着させる。
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