2014 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀北東アジアにおける植民地支配とその解放に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
13J02988
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朴 沙羅 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | カテゴリー化 / 国民国家 / レイシズム / 行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は前半期に海外ジャーナルへの論文投稿と国際学会での口頭報告・セッションオーガナイザー等を行い、後半期には国内・海外での文献資料調査とインタビュー調査を行った。 2014年7月には、国際社会学会世界大会にて、口頭報告を行った。これは日本における排外主義をテーマとしたセッションで報告したものである。また、同じく国際社会学会世界大会では、Research Committee 31とResearch Committee 38のジョイントセッションを企画し、口頭報告原稿の査読・報告のオーガナイズ、セッションの司会とコメンテーターを行った。11月にはソウルにある聖公会大学での学術シンポジウムに招待され、口頭報告を行った。 また昨年9月に公開された論文「「お前は誰だ!」:占領期における「不法入国」と「朝鮮人」の定義をめぐって」(『社会学評論』第64巻第2号)が日本社会学会奨励賞を受賞し、同じく11月に日本社会学会大会にて表彰された。 2014年12月にはオーラルヒストリー研究の歴史と展開を整理した研究ノート「研究動向:オーラルヒストリー研究の歩みと現在」(『京都社会学年報』 京都大学文学研究科社会学教室, 第22号, pp.89-115)が刊行された。 調査研究としては、2015年1月には沖縄県公文書館にて1945年から1955年までの裁判記録等を入手し、台湾-沖縄間の「密航」「密貿易」に関連する資料を収集した。また2015年2月にハワイ大学マノア校にて、第二次大戦期の日本人移民と韓国人移民の強制収容に関連する資料を収集した。また2015年3月には東京都小平市の朝鮮大学校にて、大学関係者から紹介を受けた高齢者5名に対して、終戦直後の関東地方における朝鮮人コミュニティの状況と、朝鮮からの「密航者」に対するコミュニティの対応などを聞き取った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は出産したため年度の前半期に調査を進めることが出来なかった。しかし、夏ごろから学会での口頭報告を行い、論文の執筆と投稿を進めることが出来た。また年度末には集中的に東京・ハワイで調査を行うことが出来た。学会での口頭報告は論文に、投稿論文は後々の単著の準備であり、調査は今後の研究の下地となる。年度初めに活動できなかった分を後半期に何とか取り戻せたと考え、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの調査の結果をまとめた論文・単著の執筆と出版にまず力を入れる。まず昨年度から海外ジャーナルに投稿している論文が2編あるが、そのうち1編は2度のReviseを経て、現在、2015年内の掲載を前提に査読されている。また2014年度に研究ノートとして執筆したものを、いわゆる「イギリス型」オーラルヒストリーと「アメリカ型」オーラルヒストリーの系譜として整理し直し、学説史として2015年度内に論文を投稿する予定である。また2014年11月にソウル(聖公会大学)で行った報告は、聖公会大学アジア研究科の趙慶喜教授・権赫泰教授の協力を得て、報告冊子あるいは書籍として2015年度中に刊行することを目標に、現在修正と校正を行っている。 また論文以外にも、2013年9月に提出した博士論文(2013年11月博士号授与)は、2014年度中に2度の書き直しを経て、2015年度内にナカニシヤ出版から刊行する予定である。ナカニシヤ出版ではこの他に、若手研究者が自らの行った社会調査を振り返り、「社会学的な視点とは何か」を論じる、質的調査の教科書が刊行される予定である。 このほか、8月にアメリカ合衆国(シカゴ)で開催されるアメリカ社会学会で排外主義に関する口頭報告を行うことが既に内定している。 調査としては、2015年9月に釜山・済州島にて警察史・市史・道史を収集し「密航」体験者にインタビューを行うほか、2015年1月に台北・台中に2週間程度滞在し、「密貿易」に関連する文書資料と関係者へのインタビューを行う予定である。
|
Research Products
(4 results)