2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分裂方向の制御に関わる新奇膜構造の構造と機能の解明
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13J03013
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
根岸 剛文 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「ホヤ表皮細胞の最終分裂(第11分裂)でみられる新奇な細胞内構造である糸状に形成、中心体方向へ伸長する膜構造の役割を明らかにする。またこの特殊な膜構造の分子的な機構を明らかにする。さらにこの研究を通して、新しい細胞分裂方向制御メカニズムを提唱する。」ことを目的としている。 平成26年度においては、生理学研究所との共同研究により、膜構造の電顕観察を行った。本研究で注目している膜構造は未知かつ細長の構造であるため、通常の透過型電子顕微鏡を用いて構造の全体像を把握することが非常に難しかった。そこで、共同研究者からの提案に基づいて、生理学研究所にあるSerial Block Face Scanning Electron Microscopy (SBF-SEM)を用いた観察に取り組んだ。この観察により、まずこの膜構造が隣接する2つの細胞の細胞膜より構成されることが明らかになった。また、この膜構造が中心体へと向かって伸長することも明らかになった。この観察結果はホヤ表皮細胞において、新奇の膜構造が中心体へと伸長し、分裂方向の制御に関わるという本研究における作業仮説を支持するものである。 さらに、昨年度から引き続き、レザーアブレーションによる膜構造の切断を行った。平成26年度においては、ホヤ胚においてMTOCをコントラスト良く標識できるEB3-mCherryを、膜構造の標識に用いているPH-GFPと共発現させ、膜構造とMTOCの連結が形成された後に切断を行った。この条件下において、いくつかの細胞において膜構造の後方への急速な収縮(recoiling)が観察できた。この結果は、この膜構造が後方への張力を持っていることを示唆し、中心体を後方へ引き寄せているという仮説を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標である「ホヤ表皮細胞の最終分裂(第11分裂)でみられる新奇な細胞内構造である糸状に形成、中心体方向へ伸長する膜構造の役割を明らかにする。またこの特殊な膜構造の分子的な機構を明らかにする。さらにこの研究を通して、新しい細胞分裂方向制御メカニズムを提唱する。」について、平成26年度においては、ライブイメージングとSerial Block Face Scanning Electron Microscopy (SBF-SEM)を組み合わせた観察による構造の詳細な解析により直接的に膜構造が中心体へと伸長していることが明らかになった。さらに、レーザーアブレーションにより、膜構造を直接切断することで、この膜構造と中心体の間に胚後方へ向かう引張力が存在するという力学的特性も明らかにしており、非常に興味深い構造であることを具体的に示すことができたと考えている。 平成26年度に得られた結果は前年度までのライブイメージングの詳細な観察や、細胞骨格系の関与と併せて、この膜構造が後方中心体を胚後方へ中心体を引き寄せることで、分裂方向をコントロールしているという新しい細胞分裂方向制御様式を支持するものであり、前述の本研究課題の目標の達成に向けて、おおむね順調に進展しいるといえる。 また、注目している新奇膜構造が捕らえている中心体において繊毛の形成がSBF-SEM及び、免疫染色により観察できた。このことは、研究計画の申請時には予想していなかった新たな発展であり、膜構造の新たな機能の発見が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
生理学研究所にあるSerial Block Face Scanning Electron Microscopy (SBF-SEM)を用いた観察により、膜構造の伸長先の中心体に繊毛が形成される様子も観察できた。すなわち、この中心体が基底小体を形成していると考えられる。ホヤ神経胚期の表皮細胞における繊毛形成は既に報告(Thompson et al. 2011 Dev. Biol.)があるが、分裂時期との関係についての言及はなかった。そこで、免疫染色とライブイメージング観察を組み合わせて、本研究において観察した表皮細胞の繊毛(第11分裂期)がThompsonらによって報告されたものであると考えられる結果を得た。今後は、この膜構造の形成・機能の分子的メカニズムを明らかにする予定である。現在、Dishevelled (Dsh)に注目して解析を進めている。Dshは 細胞内極性に関わる分子としてしられているが、繊毛の基底小体においても局在・機能が報告されている。ホヤの膜構造の伸長先の基底小体においても、本年度に観察できた。さらに、モルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を用いた機能阻害実験によりDshが膜構造の極性の確立に関わっている可能性を示唆する結果を得た。また、これまでに、本研究において微小管やアクチンの膜構造の形成への関与を示唆する結果も得られており、これらの結果を統合し、膜構造の形成・機能に関わる候補分子絞り込み、さらにこれらの分子の機能をMOまたは、阻害剤等により阻害し、膜構造の形成・機能の分子的メカニズムを解明したいと考えている。
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Research Products
(4 results)