2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03020
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
勝谷 祐子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 壁画 / 寄進 / 美術史 / 国際ゴシック / 15世紀 / フランス / ブルボン家 / サン・ボネ・ル・シャトー |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度はサン・ボネ・ル・シャトー参事会聖堂装飾壁画の図像解釈から、寄進者、寄進の背景を推定する研究を行った。銘文に名の記された二人の市民による作品注文が行われた後に、数年の時を経て、フォレの支配者アンヌ・ドーフィヌが第三の寄進者として支援を行ったとの説をもつ。そこで、天井部に描かれた楽譜、象徴的図案、天使の奏楽図像とアンヌ・ドーフィヌの夫であるルイ二世との結びつきを、歴史学、紋章学の研究成果を辿ることにより示すとともに、ブルボン家と関係の深いル・マンのサン・ジュリアン大聖堂聖母礼拝堂の天井壁画をサン・ボネ天井壁画の図像源泉として新たに挙げることで、サン・ボネ壁画、ブルボン家との結びつきを明らかにした。ル・マン壁画をサン・ボネ壁画の図像源泉として辿るため「天使の奏楽」図像をもつ天井壁画の収集を行い、計14件の教会での現地調査を行った。成果は2014年7月の中世ルネサンス研究会にて口頭発表を行い、『美術史研究』に投稿を行った。11月には本壁画を紹介する展覧会をコレージュ・ドクトラル・ヨーロペンヌ(ストラスブール)にて開催した。2013年度、2014年度に得られた研究成果を8枚の大判パネルにて紹介し、16枚の本人撮影による細部写真、A0版の大判写真ともに3ヵ月間の展示を行った。12月にはサン・ボネ市からの依頼を受け、映画館シネトワール(サン・ボネ・ル・シャトー)にてこれまでのサン・ボネ壁画研究成果を包括する内容で講演を行った。また、2015年1月にはストラスブール日仏大学会館と学術振興会主催のセミナーにて、「天使の奏楽」図像を持つ天井壁画に関する現地調査の成果発表を中心に聖母戴冠の祝日に捧げられたサン・ボネ壁画の図像解釈について発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度はサン・ボネ・ル・シャトー参事会聖堂壁画の図像解釈を行い、新たな見地から、アンヌ・ドーフィヌにより夫のブルボン公ルイ二世に捧げられた作品注文と寄進の背景を明らかにした。2015年度はベリー公写本、アヴィニョンやリヨンの同時代作品との比較からサン・ボネ壁画の様式研究を行う。そのため、ベリー公とつながりの深いブルボン家との関りを示した今年度の成果は次年度の研究に向けた重要な前提条件を打ち建てた。また様式研究に必要となる資料収集に関し、現地調査を必要とする部分は今年度内に作業がほぼ完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は制作年代と画家を特定する目的で様式研究を進める。サン・ボネ壁画は、画面構成やモチーフの扱いにベリー公写本との共通点が見られることや、ブルボン公の息子ジャン一世とベリー公の娘マリー・ド・ベリーとの婚姻関係から、画家がベリー公の工房より迎えられた者であった可能性は高い。しかし色や線の扱いといった様式においては、北方の画家のそれとは限定しにくく、むしろイタリア的な要素が見出せる。当時、イタリア美術の影響を強く受けていた南の都市で一定期間を過ごし、後に北方のアトリエで画法を身につけた画家であると推測するのが妥当である。ベリー公写本に関する先行研究を読み込んだ上で比較対象を絞り込み、サン・ボネ壁画との類似と差異を、作品プログラム、画面構成、モチーフ選択、様式といった複数のレヴェルに分けて比較検討することで結論を導き出す。先ず、ベリー公の周辺作品から、画面構成、モチーフ選択のレヴェルで類似する点をリスト化したデータを作成する。ついで、共通点を確認した作品群の画家の手と、様式レヴェルでの差異を確認するために比較分析を行う。分析の結果明らかになったサン・ボネ画家の傾向をイタリアの伝統の中に確認するため、リヨン、アヴィニョンの作品群、イタリア・トレチェントの作品群との様式的共通点を確認してゆく。成果は論文として投稿を行うとともに、フランス、フォレの文化財に関するシンポジウムにて口頭発表を行う。周辺地域の同時代壁画との比較分析を行うことでサン・ボネ画家の手の特性を更に限定して記述し、ストラスブール近代美術館での講演にて発表する。以上をまとめ、どのような修業を経た画家が、いつ頃サン・ボネ壁画を制作したのかという問題について結論を提示する。
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Research Products
(6 results)