2013 Fiscal Year Annual Research Report
フランス都市政策地区における教育とエスニシティを介した境界形成の社会学的研究
Project/Area Number |
13J03021
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
村上 一基 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 都市 / フランス / 教育 / エスニシティ / 移民 / 郊外 |
Research Abstract |
本研究の目的は、フランスの都市政策地区における住民間の境界形成の過程を、子どもの教育をめぐる差異化実践とエスニシティに着目し考察することである。平成25年度は、前半に研究発表や理論枠組の検討を行い、平成25年9月から平成26年3月までフランス・パリ郊外の2つの大衆地区で現地調査を実施した。現地調査では、人びとがどのように他の住民と差異化を図るのかを明らかにするための基礎的考察として、宗教施設の役割、調査地域の特徴と住民間の関係性の相違、インタビューにおける言説と実際の教育実践の違いを考察することを課題とした。 まず宗教施設、特にモスクにアプローチする前に、地区の住民がどのようにそれを捉えているのかを調べ、その後、モスク関係者に聞き取りを行った。次に地区の歴史ならびに住民の流入プロセスの検証から、2つの地区におけるエスニック集団間の関係性の違いを明らかにした。マグレブ系移民とサブサハラ系移民の関係、さらに2000年代以降に両地区にやってきたトルコ系やインド系の住民に対する否定的なまなざしを考慮に入れると、エリアスの「定着者と部外者」の理論を参考にできることが確認された。 人びとの教育実践については、インタビュー・データの分析を進めながら参与観察を行い、言説と実践の齟齬を考察した。そのことにより、地区で子どもを育てる親が中産階級の人びとと同じ概念を用いても、それが指し示すこと(特に教育方法)には違いがあることが明らかとなった。 研究成果を、関東社会学会大会(6月)、一橋大学国際社会学プログラム創設20周年記念若手研究者ワークショップ(6月)、また日本社会学会大会(10月)にて報告した。以上の研究発表の内容をもとに都市政策地区における移民の家庭教育について論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会などでの研究成果の報告ならびに理論枠組の検討を通して研究を進める上での課題を明確にし、研究論文の執筆や現地調査を計画通り実行できた。そのため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するために、4月から8月までフランスに滞在し現地調査を継続する。9月以降は研究拠点を日本に戻し、調査データの分析ならびに学会発表(日仏教育学会大会、日本社会学会大会など)、研究論文の執筆を行う。平成27年2月にはフランスで補充調査を実施するとともに、研究結果のフィードバックを行う。
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Research Products
(3 results)