2013 Fiscal Year Annual Research Report
「生の現象学」における超越論的問題構制の展開と存在神論的構造の生成
Project/Area Number |
13J03083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 敬弘 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 現象学 / 生命 / ミシェル・アンリ / 内在と超越 |
Research Abstract |
本年度(平成25年度)は、ミシェル・アンリ(1922-2002)の主著『顕現の本質』に多大な影響を及ぼした、カント及びフィヒテについて取り上げ、アンリと両哲学者との関連を探る、以下の三っの研究を行った。1. 『顕現の本質』におけるフィヒテ読解、特に『浄福なる生への導き』にっいての読解を取り上げ、フィヒテの存在概念、及び愛の概念から、いかにアンリが、自身の内在概念を彫琢していったのかを追跡した。特に、フィヒテの「曲解」がアンリの独創的思想の形成に役立った点を明らかにした点は、従来の研究にはない視点である。その成果は、ASPLF(フランス語圏哲学会)と日仏哲学会の共催大会にて発表し、2015年には、ベルギーのアンリ学会誌に掲載される予定である(仏語)。2. 次に、遺稿「カントによる合理的心理学への批判の存在論的破壊」を取り上げ、初期アンリによるカント『純粋理性批判』の読解を詳細に分析した。超越論的統覚、特に「統覚の総合的統一」と「統覚の分析的統一」との対立を鮮明にしたアンリの読解を通じて、後者への依拠が、いかにアンリの生の現象学の生成に寄与したかを明らかにした。2009年に公刊されたこの資料を扱った研究はいまだなく、その意味で、アンリ研究史において重要な研究となる。この成果は、2013年に日本ミシェル・アンリ哲学会で発表された。3. 8月にはフランス国立図書館へ文献調査に赴き、アンリとカントとのより詳細な関連を調査した。特に、アンリによる、カント『実践理性批判』の読解に注目し、『顕現の本質』で展開された尊敬概念の分析の理論的背景を調査した。従来の研究では明らかにされてこなかった、尊敬概念のアンリ的読解の意味を、後期著作『われは真理なり』の「命令」概念の分析から照射することによって解明を試みた。特に、カント的「道徳法則」と旧約的「律法」との、アンリにおける親和性に注目した点は、これまでにない視点であり、関連文献の調査も踏まえた本研究は、アンリ研究に重要な寄与をするはずである。なお、この成果は、テンゲリ教授(独・ヴッパタール大)を迎えたルーヴァンカトリック大学における学会にて、発表された(仏語)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特段の支障もなく計画書に沿って研究が行われ、順調に研究成果の発表も行われたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画に沿って研究を遂行する。文献調査のために海外渡航が必要とされる場合は渡航し、また研究成果の公表も、前年度と同様、国内外を問わず、積極的に行っていく。また、今年度は、現象学関連のフランス語の研究書の翻訳出版も計画しており、本研究課題の推進と有機的に連関させつつ、着実に進めていく。
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Research Products
(4 results)
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[Book] La vie et les vivants. (Re-) lireMichel Henry2013
Author(s)
Yukihiro Hattori, J. Leclercq, N. Monseu, G. Jean, J. -F. Lavigne, A. Devarieux, N. Depraz, C. Perrin, Y. Naka, A. David, R. Khun, F. Seyler, F. -D. Sebbah, T. Joe, P. Guillamaud, S. Brunfaut, J. de Gramont, S. Laoure ux, B. Kanabus, E. Fay, K. Hefty
Total Pages
657 (59-70)
Publisher
Presses universitaires de Louvain