2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 里奈 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機導体 / 強相関電子系 / 多軌道系 / 核磁気共鳴 / 圧力下実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属元素Mのd軌道とtmdt分子のπ軌道から成る、多軌道有機強相関系[M(tmdt)_2]の電子状態の統一的な理解と新しい電子相の発見を目指した。昨年度のNMR実験の結果、π軌道系のM=Ni, Pt塩においてM(tmdt)2分子特有の運動の存在が示唆された。またπ-d縮退系のM=Cu塩では、圧力下で磁気転移の急激な消失とともに圧力誘起の分子運動を示唆する結果を得た。この系では分子運動が電子の自由度と絡んで物性に寄与している可能性を指摘した。 本年度は、まず反強磁性転移するM=Au, Cu塩の^<13>C-NMRスペクトル測定を磁場掃引下で行い、 M=Au塩ではπ軌道、M=Cu塩ではd軌道が主に反強磁性モーメントを担っており、π-d縮退度の違いを反映して異なるスピン状態となっていることが示唆された。 また分子運動とπ-d混成の関係を調べるため、M=Pd, Zn塩の^1H-NMR測定を行った。M=Pd, Zn塩はMの電子配置がそれぞれd^8、d^<10>で、対応するπ軌道、dpσ軌道のレベルは前者ではM=Ni, Pt塩と同じくπ軌道、後者ではdpσ軌道がそれぞれ下になっている。分子構造はM周りの配位子場の影響で前者は平面、後者は84°捻じれた構造をしている。NMR緩和率はM=Pd塩はM=Ni, Pt塩と同様の振舞いを示したが、M=Zn塩は絶対値、温度依存性とも大きく異なったため、[M(tmdt)_2]系の分子運動は分子構造、π-d混成の違いに依存すると考えられる。さらにM=Pd塩ではT_N~50Kで反強磁性転移を観測した。この有機導体として非常に高いT_Nは、M=Au塩(T_N=110K)と共にこの系で他の有機導体と異なる新たな電子状態の実現を示唆している。 以上のように[M(tmdt)_2]系のスピン状態および分子運動の違いはπ-d軌道混成に関係していること指摘した。
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Research Progress Status |
本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。
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Research Products
(3 results)