2014 Fiscal Year Annual Research Report
極限環境への進出がもたらす制約からの解放:カワゴケソウ科の多様化パターン
Project/Area Number |
13J03136
|
Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
片山 なつ 日本女子大学, 理学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 制約解放 / 多様化 / 種分化 / 地理的隔離 / 分子進化 / カワゴケソウ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、急流域の岩の上という被子植物にとって極限ともいえる特殊な環境に生育するカワゴケソウ科植物を用い、極限環境下における種形成・多様化機構を解明することを目的としている。そのために第二年度は、1. 景観集団遺伝学的解析による日本自生集団の遺伝構造と地理的な分布制限要因の推定、2. 制約解放による多様化の分子基盤を明らかにするために必要なデータの取得と予備的な分子進化学的解析をおこなった。 1の解析より、集団間の遺伝的距離は、地理的距離と相関する傾向が見られた一方、距離以外の地理的要因も集団構造に寄与することが分かった。このことは、分類群特異的な生育環境により集団の隔離が強められていることを示唆しており、本科の多様化を促進する一因を推定することができた。また、ゲノムワイドな遺伝的多型情報もRAD-seq.により取得しており、大陸からの分布拡大と集団の成立過程を推定する予定である。 次に2については、カワゴケソウ科7種と姉妹科のセイヨウオトギリからRNA-seq.解析により配列情報を得、外群としてアマを用いて解析を行なった。予備的な解析の結果、科内で派生的な分類群において分子進化速度が上昇しており、同義置換速度、非同義置換速度がともに高くなっていることが明らかとなった。このことは、本科内で突然変異率が上昇したこと、選択的制約の緩和により見かけ上の塩基置換速度が上がり、新たな遺伝子進化が促進された可能性が考えられる。以上より、分布拡大パターンや塩基置換速度の上昇が本科の多様化を押し進めた基盤であることが明らかとなりつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、本研究の仮説を支持・発展させる結果:1. 局所的な環境によって地理的に隔離された集団遺伝構造、2. 科内における分子進化速度の上昇を得ることができた。また、これまでの予備的解析結果から、本研究をまとめるにあたって必要なデータが取得済みであると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度、本研究をまとめる際に必要なデータが出そろった状況である。この全データを用いて、最終年度はさらに発展的な解析を行ない、カワゴケソウ科の多様化の背景にどのような基盤があったのかを検証する。 1. 集団遺伝学的解析については、ゲノムワイドSNP多型を用いて、分布変遷と集団成立過程を解明する。 2. 本科の多様化の遺伝的基盤を明らかにするため、分子進化学的な解析を行なう。これまでに取得した全配列データを用いて、引き続き塩基置換速度の上昇を検出するとともに、個々の遺伝子の機能に着目した解析も行なう予定である。
|
Research Products
(4 results)