2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03150
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古本 真 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | スワヒリ語 / ザンジバル都市部方言 / マクンドゥチ方言 / 鼻音 / 完了 |
Research Abstract |
本申請研究の研究目的は標準スワヒリ語の土台となったとされるスワヒリ語ザンジバル都市部方言を言語学的手法を用いて記述することである。本年度は2013年7月から9月にかけてと、2014年2月から3月にかけての2度にわたってタンザニア連合共和国ザンジバルにて現地調査を行った。第1回目の調査では都市部にて鼻音音素に着目した都市部方言話者を対象とした調査(主に語彙収集)とザンジバルウングゥジャ島南部のテンスとアスペクトを中心とする文法調査及び語彙・談話収集を行った。第2回目の調査ではマクンドゥチ方言に絞って簡易文法を書くにあたってブランクとなっている部分の調査を行った。 これらの調査の成果として2本の論文(「スワヒリ語の前鼻音化阻害音について」「スワヒリ語マクンドゥチ方言の完了形に関する諸問題」)を発表することができた。「スワヒリ語の前鼻音化阻害音について」ではザンジバル都市部方言話者から得たデータに基づいてこれまでスワヒリ語の一般的な記述では音素として認められてこなかった前鼻音化阻害音を対立と記述の簡潔性の観点から音素としてたてたほうが妥当であることを主張したのち、これまで前鼻音化阻害音を音素とする上で大きな障害となっていたと考えられる9/10クラスの名詞接頭辞について、共時的には接頭辞付加が起きていない可能性が高いことを述べた。この論文ではスワヒリ語の音韻論及び形態論に新たな視点を与えるものとなっている。「スワヒリ語マクンドゥチ方言の完了形に関する諸問題」ではスワヒリ語マクンドゥチ方言の威信方言にはみられないある動詞の活用形に着目して記述を行ったすでに先行研究でこの活用形については「完了」とされていたが、なぜそれが「完了」と呼ぶに値するのか、あるいはほかの活用形との関係や他方言とのギャップについて言及した研究は本論文が初めてである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は都市部方言の共時的記述と地域方言のひとつをとりあげて記述研究を行うことを年度の当初から計画しており、その通りに研究を進めることができたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はまず第一に本年度同様に都市部方言の共時的記述を行う。その際、これまでのスワヒリ語の記述を参照したうえで言語学的に不備があると思われる点について重点的に調査する。地域方計については計画段階ではいくつかの方言の文法全体をみることを目標にしていたが、現実的に期間内にこれを行うことは難しいと考えられるため、いくつかのトピック(音調、TMA体系等)にしぼって行いたいと考えている。また既に入手している歴史資料の分析にも着手したい。
|
Research Products
(2 results)