2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J03150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古本 真 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スワヒリ語 / 方言研究 / 言語記述 / タンザニア:ザンジバル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、科研費の援助を受け、夏季(7-8月)にタンザニア連合共和国・ザンジバルにて現地調査を行った。その研究成果の概要は以下の通りである。 1. 修士論文で既に発表していた、スワヒリ語マクンドゥチ方言のコピュラ [主語接辞 -wa] が性質を表すコピュラ文で使われることに加えて、その例外的な用法の記述、その形式についての分析を行い、更に存在詞からの文法化の可能性について論じた。この研究成果は国内外の学会、研究会で発表を行った後、研究論文にまとめた。2. スワヒリ語マクンドゥチ方言の-ja「来る」の文法化について論じた。他言語や他変種において、「来る」を意味する動詞が未来を示す標識へと文法化しうることは既に知られている。先行研究では、この-ja「来る」に対してアドホックなタグ付けを別段説明もなくしているが、本稿ではこれを支持せず、あらたに、少なくとも定動詞においては、絶対テンスの標識として説明できる可能性を提案した。3. マクンドゥチ方言については、これ以外にプロソディに関する調査、関係節や形容詞などの名詞修飾要素に関する調査を行っている。プロソディについては2015年8月に8th World Congress of African Linguisticsにて発表を行う予定である。4. ザンジバル都市部方言については、関係節の調査、動詞に関する調査を行った。動詞に関する調査では、これまでに報告されていない、未来否定の接辞-to-や、動詞語幹-enda「行く」、-anza「始める」がこれまで記述されている形とはことなる形で現れることを発見した。また、先行研究において、テンスの標識として記述されていた-a-という接辞が、共時的には使用されていないことも発見した。5. ザンジバル都市部出身のインド系住民のピジン化したスワヒリ語の採取にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究目的は、スワヒリ語のザンジバル都市部方言の包括的記述を行うことにある。研究は、ザンジバル都市部方言だけでなく、地域変種の記述、分析を行ったうえで、双方を対象しながら進める形式をとっている。 本年は、ザンジバル都市部方言で未記述の事象を発見するとともに比較対象として、マクンドゥチ方言の記述研究を進め、そこでもいくつかの新発見が得られた。なお上述のザンジバル都市部方言における新たな事象の発見は、この他変種の記述研究により、可能となったものである。 また、ザンジバル都市部方言の過去の姿を知るために、重要な資料となることが期待されるインド系住民のピジン化したスワヒリ語の採取にも成功した。 以上は当初予定していた研究内容にそったものであり、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、既に採取したザンジバル都市部方言、マクンドゥチ方言のデータの分析を進め、この両方言の追調査を行うとともに、ザンジバルの他の地域変種、トゥンバトゥ方言とペンバ方言の調査を開始し、ザンジバル都市部方言と対照させる。 また。歴史資料の解析も行い、ザンジバル都市部方言が、この1世紀から2世紀の間にどのような言語変化をしてきたのかを解明する。 こうした研究成果をまとめて博士論文を執筆する。
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Research Products
(4 results)