2013 Fiscal Year Annual Research Report
光の音響的・機械的作用を用いた薬剤動態観測・薬剤輸送一体型技術の開発
Project/Area Number |
13J03171
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
角井 泰之 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光音響波 / 光超音波 / フォトメカニカル波 / 薬剤輸送 / 薬剤動態 / 光音響イメージング / 血管イメージング / 光ファイバー |
Research Abstract |
本研究の目的は、光吸収体にパルス光を高強度で照射することで生じるフォトメカニカル波を用いた経血管的薬剤輸送と、低強度で照射した際に発生する光音響波を用いた生体イメージング(光音響イメージング)を技術統合し、病変部位の検出と、同部位を標的とした薬剤の輸送とその動態観測を同一スキームで実施して治療するシステムを開発することである。本年度は、まず血管およびそれらを経由して輸送される薬剤の分布を画像化するための高分解能イメージング装置を開発した。超音波検出器の先端に音響レンズを取り付け、その四方に石英光ファイバーを配置し、生体と音響特性の近い水を介して光音響波を受信する構造とした。本装置のプローブ部は従来装置に比べて小型かつ複雑なアライメントを必要としないため、in vivoでのイメージングに適している。直径7μmの炭素繊維を対象に空間分解能を評価した結果、横分解能105μm、深さ分解能51μmであり、ラット皮膚の計測では組織中の微小血管を鮮明に画像化できた。また、ラット熱傷皮膚を対象とした模擬薬剤(エバンスブルー)の計測では、組織中の薬剤分布を深さ分解的に画像化し、その時間変化を観測できた。しかし、同組織の蛍光断層画像との比較から、薬剤が連続的に分布する領域については画像化のための信号処理を施す必要があることが分かり、今後ファントムを用いた検討が必要である。一方、薬剤輸送技術に関して、上述のプローブをフォトメカニカル波発生のための照射系として共有できないか検討した。光ファイバーにより伝送させた高強度パルス光を黒色ゴムに照射し、エネルギー、スポット径、照射角度によるフォトメカニカル波の圧力波形の変化を調査した。その結果、レーザーパラメーターを適切に選択することで、同プローブで発生させたフォトメカニカル波により生体組織へ薬剤を経血管輸送できる可能性を示した。今後、動物実験を実施して薬剤輸送特性を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光音響イメージング用のプローブの開発では、当初目標とした数100μmオーダーの空間分解能と計測可能深度1.5mmを獲得でき、これにより薬剤輸送との統合型プローブの開発を予定よりも早く開始することができた。薬剤分布の画像化に関しては、光吸収体が連続的に分布する領域の画像化について新たな課題が浮上し、今後追加の検討が必要である。薬剤輸送技術に関しては、レーザーの照射条件によるフォトメカニカル波の圧力特性の変化を調査した。全体として概ね計画通りに研究を遂行できたと考え、順調に進展しているものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果により、光音響イメージングと光機械的薬剤輸送にファイバー照射型プローブを共有できる可能性が示された。今後は、本研究課題が目的とする薬剤輸送と薬剤動態観測の同一スキームでの実施に向けて動物実験を進めていく。まず、ラットモデルを対象にフォトメカニカル波で模擬薬剤(エバンスブルー)を輸送し、光音響イメージングでその動態をin vivoで観測し、標的部位への薬剤輸送特性を評価する。本研究の最終目標は、疾患モデルとして皮下腫瘍モデルへの薬剤輸送に本システムを適用し、その有用性を実証することである。
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Research Products
(4 results)