Research Abstract |
本研究の目的は, 日本における長寿リスクに関して, (1)先行研究での問題点を改善し, かつ現実的にも整合的なモデルを提案すること, (2)ベイズ予測分布の中立化による長寿リスクの評価を行うこと, (3)長寿リスクの証券化やリバースモーゲージ等, 長寿リスクのヘッジの枠組みを提示し, その評価を行うこと, の3点である. その際, ベイズ法によるアプローチを用いてモデル推定, 将来予測, 長寿リスク評価, さらに証券化商品等長寿リスクをヘッジできる商品の評価を一貫した枠組みで行う. 平成25年度の研究実施計画は, (a)2012年の国際学会で発表した結果を基に分析をより精緻なものにすること, (b)長寿リスクを資本市場でヘッジする枠組みを考察すること, (c)リバースモーゲージのリスクを評価するために, 住宅価格の予測を行うこと, の3点であった. (a)について, 2013年7月の国際学会において, 2012年の国際学会で発表した研究をさらに発展させ, ベイズ法を適用し, 2つの因子に拡張したLee-Carterモデルを用いた日本の将来死亡率の予測と, 長寿リスクの評価の具体例として日本のデータを用いたリバースモーゲージの評価について発表した. (b)について, 長寿リスクに関する研究動向の整理を行い, アメリカやヨーロッパにおける長寿リスクやリバースモーゲージの証券化に関する論文等, 長寿リスクのヘッジの枠組みに関する論文を集中して読み込んだ. (c)について, 研究分野での国際動向が激しく, (b)における研究動向の整理に思いのほか手間取り, 計画より若干進展が遅れてしまった. しかし, 研究動向の整理と同時並行で取り組むことにより, 本格的な分析に着手しており, 着実な結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長寿リスクに関する研究動向の整理に思いのほか手間取ったものの, 住宅価格の予測に関して本格的な分析に着手しており, 加えて, 国際学会においてこれまでの研究を発展させ, 日本の将来死亡率の予測と, 日本のデータを用いたリバースモーゲージの評価について発表できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は, 平成25年度に得られた結果を基に, 日本における長寿リスクのヘッジの枠組みを検討し, ベイズ法によるアプローチを用いて, リバースモーゲージ等の長寿リスクをヘッジできる商品の評価を行う. また, これまでで得られた長寿リスクに関するモデル, 評価, ヘッジの枠組みについての知見に基づき, 長寿リスクに関する制度面での調査を進め, 日本で長寿リスクの証券化商品の普及が進まない要因や, リバースモーゲージが普及しない要因を探り, 今後日本でこれらが普及するために必要な要素を提示する. 以上の研究成果を国際会議や国内学会で発表し, 研究論文にまとめ学術雑誌に投稿する.
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