2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03203
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松井 克磨 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機化学 / カーボンナノリング / カーボンナノケージ / X線構造解析 / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
フラーレンやカーボンナノチューブに代表されるように、湾曲π共役系物質は潜在的機能性化合物群といえる。例えば、ベンゼン環をパラ位で環状に繋いだ化合物であるシクロパラフェニレン(CPP)は終端のない湾曲π共役をもつため、光物性等の電子的性質に興味がもたれ精力的に研究が行われている。また近年、当研究室ではCPPを鋳型として使うことで、用いたCPPのサイズに対応した直径をもつアームチェア型カーボンナノチューブが得られることを見出している。このような背景から湾曲π共役化合物はそれ自身の興味深い性質解明に留まらず、ナノカーボン分野の発展に寄与する可能性を秘めている。しかしながら有機合成的手法に基づき精密に構築できる構造は限られているため、より広範な湾曲π共役化合物の合成と物性評価に取り組んだ。 当研究室では既にシクロヘキサン環を用いる手法によって[9] CPPから[16] CPPの合成に成功している。そこでシクロヘキサンを用いた方法によって未だ合成できていない、より小さな[7] CPP及び[8] CPPのサイズ選択的合成を行った。[7] CPPは市販の試薬からわずか6工程で合成可能であり、総収率は2.4%であった。また[7] CPPの初めてのX線構造解析に成功し、他のCPPと同様なパッキング形式を有していることがわかった。 さらにシクロヘキサンを用いる手法は3次元構造の構築にも適用可能であり、3本の架橋フェニレン鎖をもつ3つの異なる大きさのカーボンナノケージを合成することに成功した。カーボンナノケージは分岐型カーボンナノチューブの部分骨格と見なせる興味深い構造的特徴をもつ。極大吸収波長はサイズが大きくなるに従い長波長シフトする一方で、極大蛍光波長はサイズの増加とともに短波長シフトする特異な性質をもつことが明らかとなった。最もサイズの小さな[4.4.4]ケージにおいてはX線構造解析に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来のシクロヘキサンを用いた湾曲π共役化合物の合成法を発展させ、今まで合成が困難であった新規化合物を合成することができた。また計算やX線構造解析、光物性測定等を駆使し、湾曲π共役化合物の性質の一部を明らかにした。このことから申請者の今年の研究は当初の計画以上に進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
有機合成化学的な手法に基づき精密に構築できる構造は未だ非常に限られている。そこで開発したシクロヘキサン環を用いる方法により更なる湾曲π共役化合物の合成や、より広範な湾曲π共役化合物にアクセス可能な新規合成手法の確立を目指す。得られた化合物の機能評価を行う。
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Research Products
(2 results)