2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J03203
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松井 克磨 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機化学 / カーボンナノリング / カーボンナノケージ / 芳香族化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンゼン環のパラ位を環状につないだ構造をもつシクロパラフェニレン(CPP)はアームチェア型カーボンナノチューブの最小単位とみなすことができ、直径と長さ、側面構造の整った純正カーボンナノチューブ合成のための鋳型分子として期待がもたれている。また歪みを伴った芳香族性や終端のないp軌道など特異な性質をもつため、有機合成化学者のみならず物理化学、理論化学、材料化学といった多くの化学者を魅了してきた分子でもある。近年、CPPの大きな歪みエネルギーに打ち勝つ合成法が当研究室を含む4つの研究室で開発され、その光物性や電子的性質の解明研究が精力的に行われてきた。本年度において本研究員は、[10]CPPの量的供給を可能にする新合成経路の開発、昨年度合成した3本の架橋フェニレン鎖をもつカーボンナノケージの更なる性質解明を行った。 当研究室ではシクロヘキサン環を曲がったベンゼン前駆体とする手法によって[7]CPPから[16]CPPの合成に成功している。今回工程数、総収率共に改善の余地があった[10]CPPの第二世代合成法の開発に着手した。従来法においてはパラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応を二回行う必要があったが、今回ニッケル錯体を用いたホモカップリング反応を行うだけで良くなった。また環化反応における収率が18%から81%に向上した。 カーボンナノケージの光物性、X線構造解析に続き、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。これによりサイズが大きくなるに従い、第一酸化電位が大きくなることを明らかにした。これは計算によって求められたカーボンナノケージのHOMOエネルギーが、サイズが小さくなるにつれ大きくなる結果を支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CPPの簡便な新規合成法の開発はCPPを用いた応用研究を加速させる重要な役割を担う。また得られた新奇構造体の性質解明を行うことで次の新奇化合物の設計指針を得られるものだと考える。このことから申請者の今年の研究はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の有機化学の技術をもってしても、未だ合成されていない湾曲化合物は数多く存在する。適切な最終化合物、およびそれに至る合成経路を設定することで、前人未到分子の合成に取り組む。また得られた化合物の機能評価も行う。
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Research Products
(1 results)