2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J03268
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜澤 瑞希 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC)
|
Keywords | 能 / 子方 / 稚児 / 観世信光 / 切合能 / 観世元章 / 承久記 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、室町時代末期の能作者観世信光の作品研究と、近世の子ども役者の歴史的研究の二点にまとめられる。 前者の観世信光の作品研究では、修士論文の問題点を再度考察しなおすため、未調査だった番外謡曲の写本をもとに校訂本文の作り直し、また本説との厳密な比較や、先行作品との関係などを再検討した。具体的には、信光作品のうち少年武士の能である『光季』と『村山』、『二人神子』の校訂本文の作成を行った。また、信光の作風を考察するための参考作品である『知忠』も検討したが、この作品は謡本の写本が希少であり、本文の確認のため大阪府立中之島図書館の番外謡本の調査を行った。この内、『光季』は本説となった『承久記』との比較について論文にまとめており、国立能楽堂(独立行政法人日本芸術文化振興会)の平成26年3月31日発行『国立能楽堂調査研究8』に掲載された。 後者の近世の子ども役者の歴史的研究については、江戸中期の観世大夫嗣子に関する研究を行った。17世紀から18世紀頃の、十四世観世大夫清親と十五世元章の時代が中心である。観世文庫に所蔵される、元章の書き残した資料(謡本や演能記録など)を調査し、観世大夫嗣子の活動と能楽界における位置づけを考察した。これも論文としてまとめており、今後、松岡心平編『観世元章の世界(仮)』に所収され、発行される予定である。(入稿済)また、この論文で使用した資料の一つを、平成26年5月発行『観世』の「観世文庫の文書62」で紹介している。(入稿済)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
着実に研究対象となる廃曲の作品研究が進んでいる。発表の場も得られており、おおむね問題はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度のテーマの一つであった観世長俊の作品研究は、来年度に検討することに変更した。原因は、長俊に先行する能作者金春禅鳳の研究を優先する必要性を感じたためである。禅鳳は観世信光と長俊の間の時期に活動した能作者で、長俊作品の比較対象としてはもちろん、本年度の研究テーマであった信光の作品研究においても禅鳳との比較が不可欠であること痛感し、禅鳳抜きにしては、室町時代末期成立の能を考える上で不十分であると考えたためである。禅鳳の問題をまとめた上で、修士論文で扱った長俊の作品研究の内容を再検討し、来年度の研究に生かしたい。
|
Research Products
(3 results)