2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニッケル触媒を用いた炭素-水素結合直接変換反応の開発と応用
Project/Area Number |
13J03280
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武藤 慶 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有機化学 / ニッケル / 炭素-水素結合変換反応 / ヘテロ芳香環 / 反応機構 |
Research Abstract |
遷移金属触媒を用いた芳香環の連結反応は、近年で最も進展してきた有機化学分野の一つである。従来法ではPd触媒を用いて、金属アレーンとハロアレーンとのクロスカップリングを用いてビアリールを合成してきた。近年、ビアリール合成の工程数削減、環境調和、そして反応コストの面から、従来法を改良しようとする潮流が見られる。すなわち、1)高価なPd触媒に代わり、安価な遷移金属触媒を用いる、2)調製に多段階を要する金属アレーンに代わり、その原料である芳香環を直接反応させる、そして、3)ハロゲン化物を排出しないフェノール誘導体を用いることを指向した研究が加速している。 当研究室では2012年に上記の1)から3)を全て満たす初の反応例である、Ni触媒を用いた1,3-アゾール類とフェノール誘導体(アリールピバレートなど)とのC-H/C-Oカップリングを報告した。Niに併せ用いる配位子が極めて重要であり、1,2-ビスジシクロヘキシルホスフィノエタン、dcypeを用いた場合にのみ本反応は進行する。 この配位子の効果の解明を指向し、本反応の機構解明研究に取り組んだ。その結果、反応中間体である、c-o結合がNiに酸化的付加した錯体の合成に世界で初めて成功した。この錯体を用いた当量反応、さらに速度論実験により、反応機構とその律速段階を明らかにした。一連の機構解明研究から、dcypeの効果として、c-o結合酸化的付加の促進と、生成したAr-Ni^<II>-OPivの安定化に大きく寄与している事が示唆された。 機構解明研究と並行して、C-H/C-Oビアリールカップリングがアルケニル化へと展開できる事を明らかにした。すなわち、上記のビアリールカップリングと同Ni触媒を適用すると、1,3-アゾールとエノール誘導体とのC-H/C-Oアルケニル化が進行する事がわかった。さらに、本反応を用いて天然有機化合物siphonazole Bの迅速合成を達成し、合成化学的有用性を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請者が見出していたNi触媒によるアゾールとフェノール誘導体とのC-H/C-O心カップリング反応の機構解明研究を行った。反応の中間体であるC-O結合がNiに酸化的付加した錯体の合成に世界で初めて成功しただけでなく、速度論研究も併せて行い、反応機構とその律速段階を明らかにした。フェノール誘導体に代わり、エノール誘導体を反応させる条件を見出し、C-H/C-Oアルケニル化反応の開発もできた。以上から満足な進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究のゴールは、Ni触媒を用いたC-H/C-Oカップリングの更なる展開をすることである。平成25年度に行ったNi触媒を用いたC-H/C-Oカップリング反応の機構解明研究により、本反応で見られていた劇的な配位子の効果を掴みつつある。これに続く有用な反応を開発するにあたり、この詳細な配位子効果の解明研究の重要性は言うまでもないと考えられる。今後はDFT計算などの計算化学の手法を用いて配位子効果を探究する。計算化学により得られた知見に基づいた実験を行うことで、相互にフィードバックをしながら、まずは配位子の効果を明らかにすることを目指す。その後、綿密な配位子のチューニングを行い、現状アゾールに限られている基質適用範囲を、アジン類などの他のヘテロ芳香環まで拡げる。
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Research Products
(8 results)