2014 Fiscal Year Annual Research Report
ニッケル触媒を用いた炭素-水素結合直接変換反応の開発と応用
Project/Area Number |
13J03280
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武藤 慶 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 有機化学 / ニッケル / 炭素-水素結合変換反応 / ヘテロ芳香環 / 反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒を用いた芳香環の連結反応は、近年で最も進展してきた有機化学分野の一つである。従来法ではPd触媒を用いて、金属アレーンとハロアレーンとのクロスカップリングを用いてビアリールを合成してきた。近年、ビアリール合成の工程数削減、環境調和、そして反応コストの面から、従来法を改良しようとする潮流が見られる。すなわち、1)高価なPd触媒に代わり、安価な遷移金属触媒を用いる、2)調製に多段階を要する金属アレーンに代わり、その原料である芳香環を直接反応させる、そして、3) ハロゲン化物を排出しないフェノール誘導体を用いることを指向した研究が加速している。 当研究室では2012年に上記の1)から3)を全て満たす初の反応例である、Ni触媒を用いた1,3-アゾール類とフェノール誘導体(アリールピバレートなど)とのC-H/C-Oカップリングを報告した。Niに併せ用いる配位子が重要であり、1,2-ビスジシクロヘキシルホスフィノエタン、dcypeを用いた場合にのみ本反応は進行する。 これまでに、想定中間体の単離、それを用いた錯体実験や、速度論実験により、この配位子のC-O結合切断ステップにおける重要な知見を得ることに成功している。その一方でC-H結合の切断機構については未だ不透明な点が多かった。そこで、C-H結合変換段階を明らかにすべく、理論計算の手法を用いた研究を行った。その結果、反応に用いているCs2CO3が酸化的付加後の中間体とCs-Niクラスターを形成することがC-H変換段階において鍵であることを明らかにした。具体的にはCs-Niクラスター中間体のCsにアゾールが配位しながらNi中心に接近し、C-H結合メタセシス機構を経てアゾールがニッケル化されて反応が進行することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本申請者が見出していたNi触媒によるアゾールとフェノール誘導体とのC-H/C-Oカップリング反応の機構解明研究を継続して行った。前年度においてC-O結合切断段階を明らかにし、今年度はC-H結合切断段階を明らかにすることに成功した。本研究から、塩基とNi触媒がクラスター形成することでC-H結合切断反応が促進されるという新しい知見を得ており、Ni触媒反応に限らず他の金属触媒反応においてもインパクトのある成果であると考えられる。今後の新たな触媒反応開発における触媒デザインの助力となりうる成果を得たことから、満足な進展があったと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究のゴールは、Ni触媒を用いたC-H/C-Oカップリングの更なる展開をすることである。これまでに本反応の機構解明研究を錯体実験、速度論実験などの実験的アプローチに加え、理論計算化学の手法を用いて行い、反応における二つの結合切断段階の機構を明らかにしてきた。今後の本研究の課題としては、現状オキサゾール、チアゾールに限られている基質適用範囲を他のヘテロ芳香環に拡げることである。これまで行ってきた機構解明研究で得た知見をもとに条件を検討し、配位子の構造的チューニングなどを行っていく。
|
Research Products
(6 results)