2013 Fiscal Year Annual Research Report
岩石の微細構造観察と変形実験に基づくプレート沈み込み帯の動力学の解明
Project/Area Number |
13J03294
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡本 あゆみ 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 沈み込み帯 / 高圧型変成岩 / 海洋プレート / 神居古潭帯 / 変形微細構造 / 角閃石 |
Research Abstract |
本研究の対象は北海道神居古潭帯に産出する過去(白亜紀)に沈み込み帯を構成した高圧型変成岩類であり, 6月および10月に旭川市近郊において調査を実施した. 本年度は天然の岩石の差応力・温度・歪速度を推定するために, 変形組織等の記載, 鉱物・全岩化学組成分析, シュードセクション法を用いた変成温度圧力条件の解析を行い, 温度-圧力-時間履歴の見積もりを行った. その結果, テクトニックブロックとして神居古潭帯の構造的最上位に産出する青色片岩や角閃岩は, 最終的に青色片岩相の変成作用を被っているものの, 試料ごとに異なる履歴を持つことが明らかとなった. 中でも角閃岩相の変成作用を受けた後, 温度低下とそれに次ぐ圧力上昇を経験した角閃岩は, 海洋プレートの沈み込み開始から定常化するまでの沈み込み帯の温度変化を記録していると解釈される. また, 異なる履歴を持つ岩石が近接していることは異なるタイミングで沈み込んだ岩石が深部でブロック状になり集合したことを示唆する. これらの成果は米国地球物理連合年会および国内学会において発表した. また, 構造的中位に位置するコーヒーレントなユニット(春志内ユニット)の砂質岩中から砕屑性ジルコンを抽出し, フイッショントラックおよびU-Pb年代測定を行った. その結果, 同ユニットの積年代(約100 Ma)が明らかとなったほか, 変成史にも拘束条件を与えることが出来た(国際誌へ投稿中). さらに, 同砂質岩の微細組織に基づき, 圧力溶解沈殿が主要な変形機構であることが示唆された. 一方, 青色片岩の微細構造観察を行った結果, 角閃石の細粒集合体が認められ, 粒間を充填するほか, 配列することによって微細褶曲を形成していることが明らかとなった. これらは角閃石の圧力溶解沈殿が苦鉄質高圧型変成岩の主要な変形機構であったことを示唆する. これら天然の観察に基づき, 変形実験方法の検討および試料作成を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた天然の岩石試料の調査, 観察, 記載は計画通り行われ, 低温領域における角閃石圧力溶解沈殿が高圧型変成岩の変形に影響を与えていることが示唆された. また, テクトニックブロックの温度-圧力-時間履歴の見積もりから, 沈み込みチャネル内の岩石の挙動についても知見を得つつある. 圧力溶解を示す変形構造や鉱物成長などから歪量・歪速度を推定する方法の検討を予定していたが, 現在のところ十分な成果は出せていない. しかし, 今後の実験に用いる試料作成および具体的な実験方法の検討にも着手していることから, 本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は予定通りオランダ・ユトレヒト大学に滞在し, 採取した天然試料を用いて変形実験を行う予定である. 今年度の研究において圧力溶解沈殿によって変形・成長していると示唆された角閃石を中心に, 低温・低差応力条件下における変形の条件を推定することを目指す. さらに, 天然の変形岩および非変形岩試料をそのまま供試体に用いた実験を行い, それらの強度の違いも明らかにしたいと考えている. また, 現在までに得られた成果を発表するために論文執筆を予定している.
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Research Products
(6 results)