2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期制御におけるカリウム/クロライド共輸送体の役割の解明
Project/Area Number |
13J03299
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
北川 真希 京都府立医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カリウム/クロライド共輸送体 / 細胞周期 / Cclin D_1 / Cyclin E_2 / p21 |
Research Abstract |
【目的】本研究ではヒト乳癌細胞株MDA-MB-231細胞を用いて細胞周期の進行制御におけるKCC(カリウム/クロライド共輸送体)の役割を解明することを目的とした。 【方法】無血清培養とhydroxyurea処理によりMDA-MB-231細胞をG_1期の後期に同調した。Hydroxyureaを除去し、KCC阻害剤(dihydro-indenyloxy-alkanoic acid ; DIOA)存在下および非存在下に10%FBSを含むDMEM培地で細胞を培養し、細胞増殖および細胞周期に対するDIOAの作用を解析した。 【結果】無血清培養とhydroxyurea処理により約75%の細胞がG_0/G_1期に停止した。Hydroxyureaを除去し、10%FBSを含むDMEM培地で培養すると細胞は同期して増殖を開始した。コントロール群と比較して、DIOAを添加すると細胞の増殖速度は少し遅くなったが、細胞周期は1回転した。しかし、2周目の細胞周期は著しく阻害され、約70%の細胞がG_0/G_1期に停止した。細胞周期の制御に関与する分子(cyclin D_l、cyclin E_2およびp21)の発現は細胞周期の進行に伴い、特徴的な変化を示した。DIOA添加による細胞周期の停止はcyclin D_1およびcyclin E_2タンパク質発現量の低下、およびp21タンパク質発現量の増加を伴っていた。これらの分子のなかで、G_1期からS期への移行に必須の分子であるcyclin E_2の発現がDIOA添加により著しく抑制された。これらのタンパク質分子の発現量の変化は転写レベルで制御されていた。 【考察】 同調したMDA-MB-231細胞を用いた解析から、細胞周期に伴うcyclin D_1、cyclin E_2およびp21発現量の変化がDIOAによってそれぞれ特異的な制御を受け、また、DIOAにより細胞周期がG_0/G_1期に停止し、細胞増殖が抑制されることが明らかになった。これらの結果は、KCCがG_1期における細胞内C1濃度のダイナミックな変化に関与し、cyclin D_1、cyclin E_2およびp21発現を転写レベルで制御することによって、細胞周期の進行制御に重要な役割を果たしていることを示唆しており、KCCが癌治療における分子標的に, なりうる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展し、研究成果を国際誌(Archives of Biochemistry and Biophysics)に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の成果をもとに、癌細胞の増殖・進展におけるイオン輸送体の役割についてさらに研究を推進したい。
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Research Products
(1 results)