2013 Fiscal Year Annual Research Report
中心子前駆体の分子基盤の解明: 普遍的な中心子形成機構の理解に向けて
Project/Area Number |
13J03304
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
白土 玄 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中心体 / 細胞骨格 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
本研究課題において、私は正常な紡錘体形成やゲノム安定性に必要とされる、中心子(Centriole)複製機構の解明を目的としている。平成25年~27年度3ヵ年の実験計画として、研究実施計画に挙げた「RBM14による中心子異所的形成の抑制機構の解析」及び「中心子形成に関与するRNAの探索」を手掛けている。 RBM14は、中心子複製に必須な蛋白質STILの相互作用相手として同定したRNA結合蛋白質であり、その発現抑制によって中心子及び中心子を含む構造である中心体(Centrosome)蛋白質を含む集合塊が異所的に形成されることを明らかにしている。平成25年度においては、光学顕微鏡と電子顕微鏡とを組み合わせたLive-CLEM法を確立させることを試行し、試行錯誤の上成功させた。興味深いことにこの蛋白質集合体は、それ単独で紡錘体極を形成することが可能であり、そのような極には、中心子に似たシリンダー状構造が形成されていた。RBM14は中心子形成に必須な蛋白質CPAPとSTILの結合を阻害しており、細胞質での中心体蛋白質の自発的な凝集と中心子形成をRBM14が抑制していることが示された。 これらの成果を国際シンポジウム, Cilia and Centrosomes : from Fertilization to Cancer及び第65回日本細胞生物学会大会で発表し、細胞生物学会においてはポスター賞相当のプログラム委員会長賞の受賞にあずかった。また、RBM14に関する投稿論文も査読を経て、主にLive-CLEMに関する実験の改訂を行い、中心子形成に必須な蛋白質群の集合塊への取り込みを確認した後、改訂版を再提出し審査待ちである。 RBM14は、元々RNA結合蛋白質として同定されたものである。最近多くのnon-coding RNA (ncRNA)が様々な機能を発揮していることが報告されており、紡錘体形成にRNA結合蛋白質が関与することも判明しているが、中心体形成に関してはわかっていない。そこで中心体蛋白質と相互作用する長鎖ncRNAを単離、ディープシークエンサーで同定することを試み、プレリミナリーではあるが、発現抑制によって紡錘体形成や中心体形成に異常を生じさせる候補ncRNA群を得ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・技術的な難しさから実現には時間がかかると考えていたLive-CLEMを夏までに実施することに成功した。 ・年度内にRBM14の論文受理までは間に合わなかったものの、中心体蛋白質と相互作用する可能性があるncRNA群の同定に成功し、来年度以降の実験計画に早い段階で具体的な道筋をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
RBM14に関しては、投稿論文の審査を待っているところであり、早い段階での受理を目指してncRNAの解析に軸足を移す予定である。 ncRNAに関しては、同定した中心体蛋白質関連RNAから、その発現抑制によって中心体形成、繊毛形成、及び紡錘体形成等に異常を持つものに対象を絞って解析を行う方針である。現在、得られた複数の候補ncRNAに対して発現抑制による形質の変化、RNA-FISH法による局在の確認や、レスキュー実験を試行中である。また、有力な候補ncRNAに対してはRNAを含む蛋白質のコンプレックスを単離し、さらなる相互作用の同定によって、その分子的な作用メカニズムに迫る予定である。
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Research Products
(3 results)