2014 Fiscal Year Annual Research Report
中心子前駆体の分子基盤の解明: 普遍的な中心子形成機構の理解に向けて
Project/Area Number |
13J03304
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
白土 玄 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中心体 / 細胞骨格 / 細胞生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において、私は紡錘体形成やゲノム安定性に重要な中心体(Centrosome)の中核となる中心子(Centriole) 複製機構の解明を目的としている。3ヵ年の実験計画として、研究実施計画に挙げた「RBM14による中心子異所的形成の抑制機構の解析」及び「中心子形成に関与するRNAの探索」を手掛けている。 RBM14 は中心体形成に必須なタンパク質STILの新規結合相手として同定したものであり、このタンパク質の発現抑制によって中心子様の構造物の異所的形成が起こることを初年度の研究で発見していた。今年度はその結果を支持する実験を加えることで、The EMBO Journalに論文を掲載することができ、さらに国際学会EMBO Centrosome meetingに参加、研究成果を広く海外の研究者に紹介した。この研究により中心子複製抑制機構の一端が明らかとなるとともに、中心子様構造物が正常な紡錘体形成に影響するという事実も示した。これはこれからの癌研究においても有用な知見となると思われる。 RBM14は以前にRNA結合タンパク質として同定されていたものであり、昨今の研究からこうしたリボ核タンパク質が中心体や紡錘体極に存在し、何らかの機能を果たしていることが示唆されている。そうした経緯から昨年度から主だった中心体タンパク質に結合するnon-coding RNAの探索を並行して行っており、今年度、CENNA (Centrosomal non-coding RNA)と呼称する一群のRNAの同定に成功した。その中でも発現抑制によって特に激しい表現型を示したものがCENNA1と呼称している long non-coding RNAであり、培養細胞での発現抑制によって、分裂期の紡錘体極の解離や、紡錘体タンパク質の局在異常、及び中心体タンパク質の異常蓄積、といった深刻な異常をきたした。このようなnon-coding RNAの報告は初めてのものであり、リボ核タンパク質による中心子の形成・機能の調節や紡錘体極の形成制御という未知の機構に迫る重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・RBM14に関する研究成果をThe EMBO Journalに掲載し、国際学会で発表することができた。 ・中心体蛋白質と相互作用する可能性があるlong non-coding RNA群の中から、紡錘体極の正常な機能に強く関与すると思われるものを単離することに成功し、表現型の解析からその作用点を推定しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCENNA1が中心体・紡錘体極局在型のlong non-coding RNAであるのか、また、これが中心子の正常な形成と機能に必要なのか、或いは間接的に紡錘体極の形成を制御しているのかを示したい。具体的にはRNA-FISH法による局在の観察を前年度より試行中である。加えて、抑制時の表現型がCENNA1と類似した複数のタンパク質の局在や発現量変化の観察も行っており、in vitro標識CENNA1を用いた免疫沈降実験も現在試行中である。これらの実験によりCENNA1を含む複合体を同定できれば、その分子メカニズムに迫ることが可能だと考えている。現時点でもプレリミナリーではあるが、幾つかの既知の中心体・紡錘体タンパク質が複合体の候補として挙がっている。併せてin vitro合成CENNA1を用いたアッセイでこれがnon-coding RNAとして機能していることも確認したい。
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Research Products
(4 results)